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The Cure - Wish [Artist A-C]

「長寿の秘訣は適度な病気」
クレヨンしんちゃんが永遠に小学生になれないように、磯野カツオが永遠に大人にならないように、Robert Smithは時の止まった少年のままで、癒されることのない病のための治療(The Cure)を繰り返します。隈取のようなメイクの奥底にたたずむうつろなまなざしや、絶望やら痛みやらひねくれた愛情やらのネガティブな歌は、17年前のデビュー当時から一貫して変わりません。

Robert Smithを見ていると、小学生や中学生のクラスに必ずいるちょっと浮世離れした「変なやつ」を思い浮かべます。口数少なく、窓際でボーっと外の空を見つめている。彼が何を考えているか誰もわからないし、クラスに友達はいない。ただ時々ハッとするような違う世界を垣間見せる-例えばデッサンがめちゃくちゃうまいとか、蝶の生態にめちゃくちゃ詳しいとか、どんな人が読むのかわからない難しい雑誌をかばんに入れていたりとか。みんな距離を置きながらも、なんか気になって頭から離れない。気がつくとそれはそれでいなくてはならない存在になっていて、何かの弾みで転校なんかしてしまうと、妙な喪失感を感じてしまう。ずっと後になって、大人になって、彼のことがよくわかってくる。あのころ感じたのと似たような喪失感が、何倍にも大きくずっしりと自分の人生に影を落とすようになって初めて理解できる・・。

The Cureが体現するのは、こういう感覚。誰にも内在する明るくない部分。誰もが持つ虚無感・喪失感。それを、あのクラスにいたA君のように、そのたたずまいで表現しています。彼らが、典型的なブリティッシュギターバンドでありながら、ここまでの長きに渡って一種独特の地位に居続けられたのも、この違和感なのか快感なのかわからないたたずまいから、現代人は逃れることができないから。これは一種の病気。ただ生きるうえで必要な病気。

本作は、このバンドのもついろいろな側面がすべて詰まった、いわば「がまの油(Snake Oil)」。1曲目の「Open」から終曲の「End」まで、まさに「開かれている間だけ」彼らの混沌の世界をすべて堪能できます。ポップ曲は青空のように明るく、ダーク曲は腹にドンときて、バラードは泣けるほど切ない。渾身の逸品。

ところで、恋愛ポップとして2曲挙げるとしたら、本作のFriday I'm In LoveとThe SmithsのGirlfriend In A Comaを選びます。ほかの曜日はどうでもいい、君に会える金曜日だけがすべて、という前者。ガールフレンドが重態の昏睡に陥って狂おしく悩むさまが、恋愛そのものの苦しさと二重写しになる後者。ヘビーで破滅的な内容を、底抜けに美しい音であっけらかんと賛美する。恋愛はこうでないといけません。


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