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Art Pepper Quartet - Modern Art [Artist P-R]


控えめなベースに乗ってArtのソロが綴るBlues Inで幕を開け、Blues Outで幕を閉じるその構成にまず惹かれます(オリジナルLPの構成)。物憂げで詩情に溢れる一人のミュージシャンの、開演と終演を告げる独白。うつむきながらも「僕の世界にようこそ」「来てくれてありがとう」と招き入れてくれる彼の世界の何と魅惑的なこと。

優美で流麗。曲のテーマを下敷きに、何の制約もなく自身の美的理想を描いていく様は実に鮮やか。これほど見事に表現しきれている演奏はそうそうありませんし、Art自身の作品の中でも他にないのではないでしょうか。

Art Pepperは、ドラッグに溺れる心弱きミュージシャン、という捉え方をよくされます。演奏者にとってジャズは、創造性に対する強烈なプレッシャーに常にさらされる音楽。クラシックももちろん高度の鍛錬と集中を要求されますが、その大変さはどちらかというと、人目にさらされない裏の努力での話であり、演奏会はその成果を自信を持って披露する場。これに対してジャズは、どれだけ練習していようが、演奏本番のその一瞬一瞬に常に新しいアイデア、解釈、変化を求められ、その一つ一つの出来で全てが評価されてしまいます。それを思うと、ステージに上がることの恐怖感が想像できます。

本作は、そういうプレッシャーを超越して、ミュージシャンの中から、コンコンと泉のようにジャズがあふれ出ている幸福な作品。やや暗めのトーンで、次々と形成されては消えていく音の結晶たちは、Artの心の弱さの反映ではなく、彼自身の美的価値観に裏づくものです。ここにおいて彼に迷いはなく、奇跡的なインスピレーションに導かれて、恍惚としています。


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