So-net無料ブログ作成

Blackalicious - Blazing Arrow [Artist A-C]

ラップ作品は、ラップが苦手な人には辛いものがあります。特に英語がよくわからない場合は、その面白さのおそらく半分以上は楽しむことができません。これはアーティスト側にも一部責任があります。ラップが得意だからラップをやる、という即物的な対応は悪くはありませんが、おのずとリスナーは限定され、小さな世界から抜け出ることは難しい。もっと意識的なアーティストは、ラップだけではなくその音楽的側面にも気を使い、言葉のわからないリスナーに対しても、別の形でメッセージが伝わるようにする。これはやはりコミュニケーションの基本だと思います。

Blackaliciousは、このあたりの意識が非常に強いグループです。4000 Milesという曲の中で、「We travel through music」と宣言しているように、音楽的な完成度を目指していることが明快です。ラップではなく、メロディが乗ってもおかしくないぐらい練られたバックサウンドに、コーラス部はコーラスとしてきっちり歌う。ラップ自体も、声を重ねたり、独特の間を取ることで、音の連なりとして楽に聞けるように工夫してあります。さらに感心するのは、曲の雰囲気やテーマに合わせて歌い方(しゃべり方?)を変えていることで、ラウンジ風の曲では抑え気味に、ミステリアスな曲ではドラマの朗読のような抑揚をつけ、スカのリズムではコミカルにしています。自慢であるはずのラップを、一つの楽器として客観視できているところが、このバンドのすごいところです。

本作は、様々な楽器とサウンドコラージュを巧みに組み合わせて、一曲一曲が違う個性を持つように丁寧にプロデュースされています。Paragraph Presidentでは打ち込みをピアノとベースとエコー処理でうまく強調し、表題曲は、ギターのカッティングと、お風呂で泡を立てる音(!)とを使って穏やかなリズムフローを作り出しています。こういうリズムに乗ってラップを聞くと、すーっと頭の中に全部入ってくるのが不思議です。It's Going Downは、Eminemにも通じるシリアスだけど、どこかリラックスしたヒップホップで、このバンドの尽きぬな才能に感嘆します。何しろ17曲。息もつかせぬ内容の濃さなのです。

圧巻はChemical Calisthnics(化学的美容体操)と、大河ドラマのようなスケールを持つ9分の大作Release Part 1, 2, 3。

前者は、同じアルバムの中の別のパートをサンプリングし、DJ ShadowかColdcut並みの激しいスクラッチ、コラージュで切った張ったの大手術。よくあるラジオなどからのサンプリングを、ラッブでそのまま生で再現するなど、ラップ自体も実験性に満ちていて、緩急織り交ぜたジェットコースターのような3分間があっという間に流れていきます。

Releaseは怒りのエネルギーの塊で始まり、それがスーッと空間に投げ出されたように穏やかなPart2に流れ、徐々に力を盛り返していくPart3へと見事な構成。驚いたことに彼らはPink Floydまでやってしまうのです。

基本的にこれはラップというより、ポップ。それも60年代のアートムーブメントに通じる大衆的で実験的で漫画的な要素を持つところから、「ポップアート・ラップ」と呼びたい。


nice!(1)  コメント(3)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 3

週末からバタバタしていて、またまとめてコメントになってしまいました。すみません。Blackalicious、HPで試聴してみました。かっこいいですね~実際聴いてみると、この記事で言われている事の意味が分かりました。
by (2006-02-14 17:31) 

ezsin

コメントは24時間365日受け付けてますから、大丈夫ですよお。
by ezsin (2006-02-17 01:12) 

レコード万歳

ezsinさんコメントありがとうございました。
自分は最初にChemical Calisthenticsを聴いた時に「何処かで聴いたことあるなー」って思ってよく考えたらAlphabet Aerobicsでも同じ音が鳴っていたんです!
Chemical CalisthenticsはAlphabet Aerobicsをさらに発展させた感じで多分この二曲は兄弟みたいな感じだと思います。
また遊びに来ます。
by レコード万歳 (2006-07-23 20:39) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0