So-net無料ブログ作成
検索選択

The Rolling Stones - A Bigger Bang [Artist P-R]

もう十何年も昔になりますが、はじめてインドネシアのジャカルタに行ったときのこと。父が単身赴任をしているところを訪ねていったのですが、当時は非常に治安が悪く、日本人が住む家には必ず門番がいて、窓に鉄格子がしてあるという話でした。そのほか、腕時計をして歩いていると、大きなカマで腕ごと切り落とされて盗まれる、とか、空港の係員からもお金をまくし取られるとか、いろいろ怖い話を聞かされていました。

空港から車に乗っているときに周りを見ても、確かに町は荒廃していて、道行く人たちの視線も刺すように冷たく感じて、とてもとてもビビッていました。そんな中、ちょうど車の隣に、怖そうなお兄さんが運転する大きなバイクが並んで走って来たのですが、そのバイクのマフラーに、大きなストーンズのベロ・ステッカーが張ってあるのが目に入りました。
「なんだ、この人たちもストーンズを聞くんじゃないか。」
そう思ったとたん、ものすごい安堵感と、親近感を味わったことを今でもはっきり覚えています。どんな異文化の人でも、話がひとつも通じなかったとしても、ストーンズを聞いている、という共通項を持つことでわかりあえる気がする。腕を切り落とされずにすむと思ったのです。

130万人。ブラジル・リオでストーンズの無料コンサートに集まった人の数。とんでもない数です。おそらくこれほどの規模で人を集めることのできる人、というかグループ、団体は、他にあまりいない。いるとすればローマ法王ぐらいではないでしょうか。世界のカトリック教徒の頂点に立ち、神にもっとも近い存在である法王と同じだけの影響力(集客力?)をもつ人たちなのです、Rolling Stonesというバンドは。それこそブラジル人からインドネシア人まで、世界の隅々にまで浸透している、このメガ・イメージの正体はいったい何なのか。

それをまじめに考えるのも、もう無意味な気がします。ストーンズはロックンロールであったり、反体制の象徴だったり、単にかっこいいおじさんたちだったり、40年の間にいろんなものを巻き込みながら、肥大化していった。あるところから先は、世界中の人々が勝手に「スター」というイメージを重ね合わせることのできる、公共のシンボルとして一人歩きしているからです。

このような手に負えない巨大な化け物になっても、平気でやっていられるところが、Mick、Keithをはじめとしたメンバーの凄さです。この平常心はいったいどうやって生まれるのか。悪魔に魂を売ってしまったというぐらい、世界の全てを手玉に取っているようなものですから、本当に不思議です。

そんな疑問に対するひとつの答えが本作にあります。ここにあるのはロックンロール。Sophomore(2作目)を出そうとしている、新人バンドのような真剣さと一途さで音楽に向かう、5人のミュージシャンがいるだけです。この音が進化しているのか、退化しているのか、筆者にはわかりません。ただ、前よりもいい物を作ろうと努力している、それも40年間努力している人たちの音である、ということは痛いほど伝わってきます。

よく100億円あったら何をするか、などと冗談で言ったりしますが、Rolling Stonesは、世界の全てを手に入れても、まだロックンロールをやり続ける。サーの称号を得ても、あらゆる富と名誉を手に入れても、カリフォルニア州知事になったりせず、カリスマ教祖になったりせず、「単なる」ロックンロールバンドで居続ける。この単純なことに忠実であることが、彼らを彼らたらしめ、平常心でいることを可能にしているのです。


nice!(2)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 4

友人にかなりディープなストーンズファンが居ますので、私などは彼らのことを好きと言ってもいいのかどうか。でも好きです。ジャカルタでの体験談がとても印象的ですね。それにしても、ezsinさんのところはみなさん国際派なのですね。
by (2006-02-21 22:34) 

ezsin

いえいえたまたまです。
最初の印象が強烈なので、ささいなできごとですが、インドネシア=ストーンズというリンクが出来上がっているのです。私も初来日時にチケット買うために徹夜した組なので、ディープな方かも。今はそういう元気はないので浅いかもしれないですが。本人達がバリバリにやっているわけですから、ちょっと情けない話ですね。
by ezsin (2006-02-24 00:23) 

鯉三

はじめまして、ストーンズのファンです。
ストーンズについての記事を、こんなに楽しく読めたのは久しぶりです。
by 鯉三 (2006-04-03 01:55) 

ezsin

鯉三さん、はじめまして。
来日公演、特に東京は満杯になっていないらしく、ちょっとさびしいですね。そういう自分も今回は行きませんでしたが、チケットが取れないと最初からあきらめていたので、そうとわかっていれば、と悔しい限りです。
by ezsin (2006-04-04 01:07) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。