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Four Tet - Everything Ecstatic [Artist D-F]


テクスチャー(Texture)、という言葉があります。風合い、生地などの意味をもち、特にデザイン/アートの世界では、独特の色合いや形状をもった物質の表面のことをいいます。よい例が、錆びた鉄板の、赤茶や黒や緑などが混じった様子や、薬品が垂れて色が微妙に混じった焼き物の様子などです。不思議なことにこのようなものは、人工的に作るよりは、自然の中で偶然にできたものの方が味わい深い。「テクスチャー・フェチ」と呼ばれ、街を歩きながら、あちこちの面白いテクスチャーをデジカメに取り続ける人がいるくらいです(まじめに仕事の場合もあります)。

本作を最初に聞いた時は面食らうかもしれません。
かなり騒音に近いノイズを含む一曲目あたりは、引いてしまうかも。2曲目はまだやさしい。途切れ途切れのテープからはきちんとしたメロディが流れます。ただ、バックでガチャガチャしているのが、少々気になるかもしれません。「ガチャガチャしている」というのは、ブリキやら、太鼓やら、鈴やらの、おもちゃ箱の中身をひっくり返して、投げたり振ったりたたいたりして騒いでいる、ということ。これがFour Tetの基本的なサウンド。かなりルーズですが、でたらめに音を鳴らしているわけではなく、ちゃんとコントロールされています。

Aphex TwinやAutechreなどに共通する世界ですが、Four Tetは、よりアコースティックでアナログな素材を重視。身近な「ガラクタ」を使い、手作り感覚のビート・ミュージックを創造しています(「フォークトロニカ」などと言われています)。Beth Ortonなどのリミックスなどを手がけるプロデューサーでもあります。

そんな最初の「変なバリア」をくぐりぬけて中に入ってしまうと、そこはかなり居心地のいい世界。ゆったり目に流れるビートやリズムは、生理的に気持ちいいですし、いい加減な音と、きれいな音との適度なミックスは、全てがきれいな音で統制されているサウンドよりも、耳への負担が少ない。物音ひとつしないコンサートホールの中で、高度に統制されたクラシック・アンサンブルが演奏するのに対して、木々のざわめきや子供たちの遊ぶ声に混じって、口笛を吹く。そういう感じ。別にどちらがいいというわけではなく、どちらも音楽。

Four Tetがそこらじゅうにばら撒く、一聴して「ムダ」と思われる音の断片は、非常に大きな意味を持っています。単なる打ち込みも、そこに錆びたり剥げたりする修飾を施すだけで、いろいろな表情を持ってくる。ザワザワしたバックの音も、単色の背景ではなく、色や質感のグラデーションを持った深みのあるテキスチャーの味わいを生みだしている。そうなのです。Four Tetは、いろいろな音を混ぜ、付けたり張ったりして、音にテクスチャーを付けている。サウンド・テクスチャー・フェチなのです。


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