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Moby - Hotel [Artist M-O]

アルバムを追うごとに、歌としてのまとまりがはっきりしてきています。もともとアンビエントやビート主体の表現をしていましたが、歌やメロディラインが前面に出てくるようになりました。Mobyはいつもさびしそうで、人を寄せ付けないような雰囲気を漂わせていますので、この変化は面白いと思います。

今まで「オタク」的に一人でスタジオにこもり、好きな音を思う存分追求し、自分の主張を周りを気にせず発信してきました(動物愛護など)。今も基本的なスタンスは変わらないのですが、もっと社会に、街の中に自分をさらけ出すようになっています。そう感じるのは何よりも彼のボーカルです。正直言って上手ではない。細くて弱々しく、音程は不安定。坂本龍一やBrian Enoと同じで、歌わずにサウンドクリエーターでいた方がいいよ、と助言してあげたくなります。それでも彼は歌い続ける。何が彼をそうさせているのでしょう。

何でもここに結びつけるのはよくありませんが、2001年911のあの日、例の二つのビルはMobyの住んでいるアパートメントからよく見えていたそうです。彼は自分のホームページの掲示板に、当日とその後数日間にわたって、克明に起こっていることを書き綴りました。まるで世界の大きな変動と、自らの心の中の動揺をシンクロさせ、全てをそのままライブレコーディングしているような感じでした。ニューヨークも、イラクも、スタジオの中も、自分の感情も全ては繋がっている。もはや彼には隠すこともないし、隠れる必要もない。間違いなく何かが変わったのだと思います。

本作は、ゲストボーカルを迎えていますが、「ゲストボーカル」という表現が当てはまるほど、基本は彼の声を乗せる楽曲が中心になっています。もう一つのトレードマークとなっている、荘厳なキーボードも手伝って、今まで以上に憂いに満ちた雰囲気になっていますが、悲壮感はない。彼の「憂い」はローな気分を指すのではなく、生活の基調音。明るいことも、元気なことも、戦うことも、全てはこの上で成り立っている。彼の笑わないポートレートは普通の挨拶。ガラス細工のような繊細なForeverで、「永遠にこの気分のままでいられるよ」と歌っています。彼はただ今の世の中をそのままに受け入れ、今の世の中に必要な音楽を作り続けているだけなのです。


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