So-net無料ブログ作成
検索選択

Marvin Gaye - What's Going On [Artist G-I]

迷ったときに立ち帰るところ。何が美しく、何が心地よく、何が安らぎかがわからなくなったとき、よくこのアルバムに戻ってきます。たくさんの音に触れ、溺れ、戯れたあと、何を聞いていいのかわからなくなったとき、「ここだよ」とささやきかけてくる作品。Marvinの声は、私たちを招き入れる。遠く離れていても、懐に呼び寄せる。包まれたくなる何かがある。人によっては、それを究極のセクスアピールと捉える。

アルバム全体が大きな海原。一つ一つの曲は、微妙に形と高さの違う波。砂浜に寝そべるわたしたち聞き手の全身に、優しく打ち寄せては引いていく、天然のリズム。奇跡なのか計算ずくなのか。完璧なサウンド・プロダクションがつむぎだすみずみずしいタッチは、風化を知らない。

本当の安らかさは、本当の厳しさを知らないと感じられない。破滅があるからこそ救いがあるように、このアルバムの平安の裏には不安が横たわっている。Marvin自身の波乱に満ちた人生を、この作品に結び付けて議論するつもりはありません。苦悩する人間のみが芸術作品を残せる、というつもりもない。ただ一アーティストとして、創造力のピークにあったとき、にじみ出るように深い平安がテーマとして顕在化したことは、間違いない。経験や感情を普遍的な芸術性へと昇華できる点は、人生の辛苦とは無関係に、この人の持つ天才。そしてその根底には、豊か過ぎるほどの感受性がしっかりと根を下ろしているのです。

本作を聞くと、目の前で地球儀が回りだします。Mother、Brother、Fatherとの呼びかけは、家族を貫き人類へとつながっていく。Inner City Bluesのエンディングで、最初のWhat's Going Onが再び呼び起こされるように、アルバムは自転する、輪廻する。Marvinの大きなメッセージを感じるとともに、それはあくまで地球儀。本当の宇宙に浮かぶ青い地球ではなく、暖かい居間の真ん中に置かれた地球儀。家族が囲んでくるくる回す小さな球に、思いは収束していくのです。


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。