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Dixie Chicks - Taking The Long Way [Artist D-F]

イギリスが、いろいろなバンドが乱立する、いわば戦国時代的な様相を帯びているのとは対照的に、ビッグ・アーティストのビッグ・アルバムがチャート独占、メガヒット状態のアメリカ。代表格が先ごろ出たDixie Chicksの本作。アメリカの現在が見えてきて面白い。

メガ・ポップ・カルチャーが成立しにくい時代にあって、一番ヒップでないカントリー界から、こんな素朴で純なサウンドがいきなり席巻してしまう。良いといえば良いし、何で?といえばこれまた説明がつかない。女子十二楽坊、Celtic Woman、と時代はトラッド+女性なのだ、といくのもかなり強引。そもそもなぜ今なぜトラッドなのかがわからない。

ただ確かにカントリー界は面白くなってきている。かつての保守的で閉鎖的な風潮から、より実験的で開放的な方向に変わりつつあり、非常に広いオーディエンスにアピールするアーティストや作品が生まれるようになった。詳しくはわかりませんが、「支持基盤」である南部の視点が、ブッシュ政権や911を通して否が応でも外部に向かれるようになってきたことも、たぶんに影響しているのでしょう。地域に根ざしていた文化が、外に目を向け始めたときに生れる、新たなマーケットと発展の可能性。バンジョーとフィドルで牧草の風を歌うのではなく、都会の悲哀を歌ってもいいのです。Dixie Chicksも、プロデュースしたRick Rubinが「彼女達はロックの心を持ってカントリーをやっているのだ」と言ったことに象徴されるように、ローカル性に逃げ込もうとする姿勢はない。自分達の基盤としてのカントリーはしっかりと認識するも、ぬくぬくと安心できる既成のジャンルに留まることなく、より普遍性のある「鳴り」を追求している。その響きは確実に世界の人々に届きつつある。

テキサス出身の彼女達が、数年前に発した些細なブッシュ批判。ラジオ局から締め出され、レコード不買運動、脅迫などとんでもない運動に発展。それがうそのように新作はチャート1位に君臨。一方で、今でも引き摺り下ろしてやれとする不穏な動きがあるらしい。この二つの矛盾する現象が同時に成立してしまうのも、きわめてアメリカ的。論理性と合理性だけは説明のつかない、この国の持つ大きく複雑なダイナミズム。実はその誰の手にも負えない途方もないエネルギーが、ポップ・カルチャーを産み出す原動力なのではないか。大統領批判をするかわいいカントリー・ガールズ・バンドが、ぼろくそに言われながらも全米ナンバーワンに君臨してしまう。誰が仕組んだわけでも、誰が説明できるわけでもない。でもこれほど痛快なポップ現象はないではありませんか。ポップになにより必要なのは、この「痛快さ」なのです。


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