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John Foxx & Harold Budd - Translucence [Artist D-F]

アンビエント・サウンドが実現するのは、「空白」を際立たせること。ちょうど鉛筆のデッサンに似ている。大きな白いキャンバス。鉛筆一本が描き出すのは、黒い線そのものよりも、何も書かないところの白い空間。それは地平線の彼方まで伸びる空であったり、物言わず立ちはだかる壁であったり、孤独にさいなまれる静かな背中であったりする。何もないところに浮かび上がる様々な表情。時には彩色溢れる画面よりも多くを語ることがある。

John Foxxのかすかなシンセサイザーと、Harold Buddのわずかなピアノの音は、最小限を描き出す鉛筆のようなもの。あとは放たれた音が、長いエコーを引く、何もない空間が広がっているだけ。私たちの意識は、その音のない空間の中に解き放たれ、しばし停止する。ただの沈黙の中にいるわけではない。そこは音が鳴ったために浮かび上がった、表情を持つ空白。まるでその表情が意識の中に染み込むのを待つように、しばらく保たれる無言の時間。

曲によっては音が連なっていて、空白がない。音と空白のバランスを変えることが、本作におけるバリエーションの考え方。空白がないところでは、素直に音を追い、音のないところでは空白に身をゆだねる。このリズムが、生理的にも精神的も圧倒的に気持ちよい。

あえて言いたいのは、このことはメディテーションではない。あくまで音楽を聴く行為なのだということ。無地の空が広がるキャンバスを見つめるのが、本当の空を見るためではなく、「絵」を鑑賞するためであるように。


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コメント 2

鯉三

ジョン・フォックスって、元ウルトラ・ボックスの彼ですよね。ソロ二作目の『ゴールデン・セクション』はLPで何度聴いたかわかりません。当時からアンビエント的な(?)音をヒュルヒュル、ヒュンヒュン出してましたよ。
by 鯉三 (2006-07-25 01:39) 

ezsin

そうですよ!今でもヒュルヒュルやってますよ(笑)。
バンドにいながらアンビエント指向を持っていたという点ではDavid Silvianに近い感覚ですよね。ビジュアル的にも似ている。何だかとても80sらしい感じ。
by ezsin (2006-07-25 23:34) 

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