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Palestrina - Missa Aeterna Christi Munera [Artist P-R]

500年前のチルアウト・サウンド。Palestrina 1525 - 1594。いわゆる教会のミサ曲です。グレゴリオ聖歌が、ビートやシンセを乗せないと現代で機能しないのとは対照的に、そのまま殺伐とした大都会のディープな時間帯に流せます。いや、そんなときでなくても、宗教性とは無関係に、神経の末端までしびれさせる、強烈な浸透力を持っている。

バロック以前。いわゆるルネッサンス期の音楽はまだまだ教会色が強く、厳格な規律と節度の支配下にあった。感情は押し殺され、がちがちのルールの中で儀礼的なものとして位置づけられていたはず。ところが不思議なことに、そんな声楽曲の中から、信じられないようなキラキラした音の宝石がこぼれ落ちてくる。まるで清流の清水がそのまま空に浮かんでいるように、純粋がそのまま音として現出している。

信仰とはあやふやなもので、禁欲的な神聖と、肉欲的な自我とが裏で激しくぶつかり合う。「聖人」が理想とされるが、実のところ普通の人はそれを望まない。自我と神聖の間で格闘しながら、何とかやっていくのが「人間」らしさ。Palestrinaの音楽が響き渡っていた聖堂は、表向きの静けさとは裏腹に、人々の苦悩の集まる場所でもあった。

人間の「声」は正直です。神をたたえる旋律が、そのまま生身の人間の思いをも乗せる。Palestrinaの曲が神聖であればあるほど、それは切実な人々の願望をも表すことになる。あからさまでないだけ、それは心の奥底から湧き上がるような想いとなる。

本作には、Canticum Canticorum(ソロモンの雅歌)という「愛の歌」からも数曲が収録されています。男女間の愛情を賛美したあまりの官能的な内容ゆえに、長く聖書の正典に入れるべきかが論争となってきた詩歌。その響きはミサ曲と同じような、うっとりする美しさに満ち溢れている。神であろうと、恋人であろうと、湧き上がる感情は同質なのだと思わずにいられません。

Hyperionは、英国のクラシック・インディペンデント・レーベル。特に声楽曲のデジタル録音にこだわりがある。Palestrinaのような音楽は、合唱隊の構成(少年、男性、混声)、録音場所(スタジオ、聖堂)から、どこにマイクを配置するかまで、全てを考慮に入れないといけない。今までにいろいろな録音を耳にしてきましたが、ウェストミンスター寺院で録音されたChoir Of Westminster Cathedralの本作が、声のバランス、音の反響とも一番美しい。もちろん、悩める現代人のささくれ立った感性に一番合う、という基準でです。


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試聴とか軽いことしてていいのか、と思ってしまいますが、心洗われるとはまさにこういうことですね。荘厳ですね。
CDはセール中で、欲しいのが色々あって困りましたが、こちらでも紹介されていたロックの名盤を超お買い得で2枚購入しました。読むたびに物欲が増しますね~
by (2006-07-31 23:25) 

ezsin

身も心もきれいになりますよ。ストレスが剥がれていく~、という感じ。
セールのときって、不思議と気になっていた昔の名盤を買ってしまいますよね。今まで決断し切れなかったところを、セールが背中を後押しするような。お店も、そこんところをよく考えているのかもしれないですね。
by ezsin (2006-08-01 21:55) 

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