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Bob Dylan - Modern Times [Artist D-F]


新譜を取り上げるべきか、Highway 61 Revisitedを取り上げるべきか、それが問題だ。Bob Dylanを語るのは、哲学的な問題。44作目なのだという。寅さんは48作目まであるので、まだまだと考えるか。43作との比較の中で語るべきなのか。思わず腕組みをしたまま固まってしまう。うーん。

そんな聞き手の心配はとうの昔にお見通しなのか、この生きる伝説の巨人は、実にあっさりとわかりやすいサウンドを鳴らしてくれる。うれしくなるくらいシンプルで屈託のないロックンロール。しかもアクが抜けて、純度高く蒸留されたエッセンスだけのロックンロール。結局はロックンローラーじゃないか、とは口が裂けてもいえませんが、これがミュージシャンの偉大なところ。哲学者や経済学者が権威の高みに昇れば昇るほど現実離れしていくのとは対照的に、ロック・ミュージシャンは、ひたすらロックをやるしかない。こんなにありがたいことはない。

しかし正直言うと枯れている。もしかしてここのところずっとかもしれない。ここ2作はDylan史上でももっとも充実していると言われていますが、そもそも「Dylan史上」ってどんな世界なんだ。どれほどの認知度を持った世界なんだ。枯れかかっている私達世代にとっては、声を大に「それでもロック」と言いたいところだけど、やっぱり時代はArctic Monkeys。2006年にとってBob Dylanとは何なのだろう。不要なお荷物?敬老の象徴?

世間一般の視点はともかく、Bob Dylan自身のスタンスは明快。現代を冷ややかに眺めながら、自分の音楽に確信を持っていると宣言するThunder On The Mountain。仕事のことはようわからんけどWorking Man's Bluesを歌うのさ、とつぶやき、地平線の向こうの太陽の後ろ側で愛を探すと歌うBeyond The Horizon。冷徹だけれども潤いのある視線で見つめる人生の機微。この世界の見えないしわのひとつひとつまで、彼には見えているように歌う。枯れていくことをも凝視し、老いる自分と現代との関係をそのまま題材に彼は作品を作り、歌う。アーティスト魂を常に時代の中心に向けてぶつけていく真摯な姿勢は、安易な流行で片付けるべきことではありません。

2006年とそこにいるBob Dylan。これが本作のテーマであり、だから「Modern Times」なのです。その場に証人として居合わせることのできた幸運を、素直に喜びたい。


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