So-net無料ブログ作成
検索選択

This Mortal Coil - It'll End In Tears [Artist S-U]


入院しているおばさんのお見舞いに行きました。肝硬変が進んでいて、年内持てばいいほうと言われている。もともと酒飲みで、めちゃくちゃな生活をしていて、ずっと独身。親戚も手を焼いていたけれども、さすがにみんな沈んでいる。点滴でアザだらけの腕を見せながら悪態をつくのは相変わらず。筆者などはいまだに小僧あつかい。それでも「早く山にたけのこを採りに行きたい」と言い出すと、返す言葉がすぐには見つからない。実家に帰るたびに、ビール・ワンケースを持っていった。「悪いねえ」と言って誘ってくれるのだけれども、正直、付き合うのはあまり好きではなかった。何だか病気に加担したみたいで、落ち着かない。

思いつく限りにおいて、ポピュラー・ミュージックに「レクイエム」はない。ある特定の人に捧げられた曲は数多くあれど、亡くなった人一般の魂を慰める作品はちょっとない。たぶんそれは儀式とともに、宗教の領域と考えられているからでしょう。故人の好きだった音楽を流して追悼するのが、ポップ・スタイルと考えられているからでもある。ところがひとつだけ例外がある。筆者は長いこと、本作がレクイエムだと思ってきた。

インディーレーベルの4ADが持っていた世紀末耽美主義。80年代を覆っていた暗さを逆手にとって、メランコリーを美に昇華させた作品群。This Mortal Coilには、魂を浄化する作用がある。怖くなるほどの静けさとはかなさ。それは厳粛で、畏敬の念に満ち、ひたすらにへりくだっている。しかし、その静けさの先には、希望と楽しさが見える。生も死も超えたところで、美しさを賛美していることに気づく。

ガハガハ笑ってばかりいるので、安心して帰ろうとすると、部屋を出る寸前に突然おばさんは泣き出してしまった。「だいじょうぶ、だいじょうぶ、元気出して、また来るからね」。病院を出ると、9月だというのに33度の熱気がモワッと全身を包む。空を見上げると、皮肉なほど真っ青が広がっていました。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 2

試聴した位で、分かったつもりになってはいけませんが、なんとなく分かるような気がしました。
おばさまが、日々を穏やかに過ごされると良いなと思います。ezsinさん始め色々な方の支えを、きっと心強く思われていることでしょうね。
by (2006-09-07 00:20) 

ezsin

ありそんさん:本当に暖かいコメントありがとうございます。ジンとしてしまいました。おかげさまで穏やかに過ごしていると思います。もともと芯の強い人なので、今回の件でどんなことになってもへっちゃらだと思います。それよりもThis Mortal Coilを勝手にレクイエムにしちゃったことにちょっと後ろめたさがありますね・・
by ezsin (2006-09-07 11:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この記事のトラックバックURL:
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。