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The Doors - Strange Days [Artist D-F]


Jim Morrisonが死んだとき、本当に死んだのが彼本人だったか物議をかもしたことは、非常に象徴的です。もしかして今でもどこかで生きているかもしれないと考えるのが、あながちばかげていないほど、私たちはThe DoorsとJim Morrisonをしっかりと捉え切れていない。そもそも死んだのは人間としてのJim Morrisonだったのか、The Doorsというとてつもなく巨大な化け物の中のキャラクターとしてのJim Morrisonだったのか。そもそも私たちは何に夢中になっていたのか。The Doorsというバンドは本当に存在していたのだろうか。考えれば考えるほど頭が混乱してくる。そしてその混乱の渦のど真ん中に本作が位置しています。

ここでは魔法が真に迫って現実化している。いや、正確に言うと現実と非現実の境界線がこの中ではきれいになくなっている。Love Me Two Timesの壮絶な切迫感。Moonlight Driveの幻想性。Horse Lattitudeの混乱。You're Lost Little Girlの不気味な怖さ。When The Music's Overの終末観。Jim Morrisonは演じているのではなく、彼の存在そのものがテーマに応じて変幻自在に入れ替わっている。それくらい生々しい。うそなのにうそになっていない。

その後のDavid Bowieや、一時期のBonoが、虚構の世界でひとつのキャラクターになりきろうとしたのに対し、The Doorsでは、キャラクターと本人の区別がつかなくなるほど突き詰められてしまっている。あの狂乱の60年代という環境も含めて、すべてが常道を逸している。バンドが音を作り出しているというより、時代が、そして私たち自身がThe Doorsという底知れぬ存在を作り出してしまった感がある。The Doorsは、私たちの尽きぬ欲望を吸い取り、膨れ上がるスポンジでしかなかった。めちゃくちゃ高性能でそれだけのために存在していたスポンジだったのかもしれない。バンドはなすがままに巨大化し、あるところではじけてしまった。しかしそれは器としてのバンドがはじけただけであり、膨れ上がろうとする得体の知れない黒々とした欲望はもはや収まることができない。Jimが死んでからも新たなカラダを求めるように、私たちの欲望はうねうねと這いずり回った。それはきっと今も続いている。

Strange Daysを鳴らすたびに、そのスポンジは再び機能を始める。私たちは私たちの幻想をそこに投影し、リアル化してしまう。今日だけではなくて明日の分まで愛してくれ、と私であるJimは叫び、僕らは変(Strange)だと、私であるJimが認識する。月まで泳ごうと本気で思い、甘美な死の誘惑に酔いしれる。「音楽が終わったあとに(When The Music's Over)」と宣言しながら、Jimは音楽が終わらないことを知っている。Jimがいなくなっても、The Doorsがいなくなっても、Strange Daysは続き、スポンジは膨らみ続けることを知っている。ほかでもない、Jimは私自身なのですから。


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コメント 2

学生時代に映画を観たのを思い出します。なんだか強烈で、一緒に行った友達が見終わった時、これって何だったのって混乱してました。
by (2006-09-10 00:39) 

ezsin

Oliver Stone/Val Kilmerですね。確かに混乱しまくってる。60年代ってめちゃくちゃな時代だったんですね(自分も知らないけど)。でもよく考えると、30年後には「00年代って狂ってたよね」ってことになるのかも。テロ、天災、異常犯罪・・
by ezsin (2006-09-10 01:35) 

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