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Pat Metheny and Brad Mehldau - Metheny Mehldau [Artist M-O]

Pat Methenyは旅人だとずっと思ってきました。リュックを背負った音の旅人。ジャズを故郷としながら、留まることよりも、あちこち見知らぬ世界にせっせと出かけていき、違う空気、異質な価値観との接点に自らを置くことを生きがいとしてきた。自分の音楽の感性をそうした未知のものとぶつけていくというよりも、そのあいまいな境界線、すなわちフツフツと産まれては消えていく創造の泡のジャグジーバスこそが自らの居場所だと悟っているところがある。もちろんふらふらしているわけではない。一貫して評価の高い作品を作り続けられるのは、創造の泡からいつも上質の、誰も見たこともない美の結晶をすくい取ることのできる稀有の才能を持っているからです。秩序と無秩序の境界である「カオスの縁(ふち)」。創造の源であるけれども、相応の覚悟と力量がないと踏み込めない領域。ここを活動の拠点にできるミュージシャンは数少ない。

気になるのは彼のリュックの中身。平易な言葉ですが、それは「リュックいっぱいのポジティビティ」だと思います。どこからでも、何からでも、美しいサウンドは産まれ得る、という信念。強がりでも、こじ付けでもなく、彼が音作りに向かうときにごく自然に湧き上がる根本的な動機。彼が好む青い空と原色の明るいコントラストさながらに、そこに迷いや躊躇はない。

さて、そこで若きBrad Mehldauとの「境界線」である本作です。これは聞く前から大方の予想がつきますが、完成度はめちゃくちゃ高い。お互いを完璧に把握し、どこでどれだけ共鳴し、自己を吐露し、流れを作ればいいかが阿吽の呼吸になっている。バックのない、ギターとピアノの差しの勝負でも、火花がバチバチ飛ぶことはない。そんな次元はとうの昔に超えて、両者の「理解」を超えて何ができるかを理知的に、統制された肉体性でもって追求している感じがする。瞬きひとつする間も与えぬぐらい、濃密な才能の絡み合いの時間が過ぎていきます。

Brad MehldauもMethenyと同じように、カオスの縁に踏み込める類まれな音楽家。ただこれは筆者の感覚ですが、Mehldauはリュックを背負っていない。ポジティブもネガティブも、持ち合わせていない。あるとすれば、ひたすら音楽の感動の本質に迫りたいという怖いくらいの「業(ごう)」のようなもの。変幻自在に飛び回る彼の探求スタイルを見ていると、彼自身のオリジナリティすらも彼には興味ないのかもしれないと思えてくる。

Methenyの「明」とMehldauの「無」。現在の音楽界でこれほど興味深い掛け合わせはないかもしれません。M&M。Metheny and Mehldau。Mei and Mu。ジャケットもちょうどMethenyの青(=明)とMehldauの白(=無)。 で一件落着。お後がよろしいようで・・。


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コメント 5

鯉三

これは新譜ですね。
さっき視聴してみました。グループにはLyle Maysがいるのに、意外と今まで、ピアニストとのコラボレーションって少なかったのかなと思いました。メセニーのギターもここ最近ではもっともクリアーな音で、歌心も感じられました。なんとか台湾で入手したいものです。
by 鯉三 (2006-09-18 00:27) 

ezsin

Lyle Maysとはまた違った刺激・味わいがあります。
正直言うと、かなり異質なものを持っていると思っています、MehldauとMethenyって。それでもそれを超えてコラボできてしまう所がすごいなと思います。これだけの作品なので台湾でも入手できるはずだと思いますよ。もし無理ならばお手伝いさしあげます!
by ezsin (2006-09-18 18:37) 

鯉三

お気遣いいただき、ありがとうございます。
アマゾンで購入して実家から台湾へ送ってもらうことにしました。
早く家でじっくり聴いてみたいです。
by 鯉三 (2006-09-27 00:58) 

鯉三

今日、日本から届きました。早速聴いています。
Mehldauのピアノ、初めて聴きましたが、まさに変幻自在ですね。昔聴いたチック・コリアとゲーリー・バートンの共作を思い出しました。それよりもお互い解き放たれていながら、もっと緊密な感じがしました。いいアルバムを紹介していただき、ありがとうございます。長く聴けそうです。
by 鯉三 (2006-10-06 00:00) 

ezsin

どういたしまして。鯉三さんならきっとお気に召すだろうと予感していました。逆にチックコリアの盤は聞いたことないですね。今度トライしてみようと思います。
by ezsin (2006-10-06 11:40) 

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