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DJ Shadow - The Outsider [Artist D-F]

ヒップホップの前衛性をどのように考えるか。スタイル自身が革新的だった時期はとうに過ぎて、「ヒップホップ」が言葉として定着した今となっては、なおさら難しい。DJ Shadowは、メインストリームのシーンとはやや距離を置きながら、ずっとこの問題に真摯に向き合ってきたアーティストだといえます。新作のタイトルである「The Outsider」からも、そのスタンスがいかに骨の折れることかがうかがい知れます。ただ今まで、マニアックな音の装飾の中に自らを包みこむことで、斜に構えたスタンスをとってきたのに対して、ここでは気合を入れて正面から問いかけているところがある。音の骨格がはっきりとし、テーマ自体もヒップホップのあり方を、ロックやソウルや、はてはクラシックまで含めた中で捉えようとしている。

のっけからCurtis Mayfieldばりのファンキーなソウルナンバーをぶつけてくるところからもそれは伺えます。7曲目のSeein Thangsまで徹底的にヒップホップの既成の枠組みの中でラジカリズムを追い求めた後、Broken Levee Bluesのブルージーなギターソロで、より広い視野に向けて思いきりギアチェンジしている。激しいパーカッションのパワーを模索するArtifact。スローロックの粘っこさを追求するBackstage Girl。尺八と琴やクラシックギターの音色を思わせるギターの爪弾きをフィーチャーしたTriplicate/Something Happened That Dayでは、ワールドミュージックが垣間見える。ヒップホップのフロンティアを押し広げるための試行錯誤が、ここから見て取れる。

後半のErase Youからは、ロックとソウルと融合した形の新しいヒップホップの形が姿を見せ始めます。曲名から連想されるわけではありませんが、Erase Youなどは、Radioheadばりの底の見えない虚無観にあふれている。しかしそこにDJ Shadowならではの存在感のある打ち込みとノイズがかぶさり、虚無感を超えた覚醒した意志を感じさせる音になっている。その意志の根底に息づくのは、まぎれもなくヒップホップの持つ肉体性と生命力です。

What Have I Doneではビートもラップも消え、朗読に近い発声法の中で、男と女の駆け引きをヒップヒップの「常套」とは違う様式で提示してみせる。後半のコーラスのゆらめきは、ジャンルの垣根を越えた妖しくも美しいため息に聞こえる。

全編を聞いてようやく、DJ Shadowの描く構想の大きさに気づきます。彼の頭には、ジャンルを超えたところに、新たな音の地平を広げていこうとする思いに満ちている。様々な音を錬金術師のように扱う「DJ」。The Outsiderには、壮大な試みに孤軍奮闘する自らを重ねるとともに、既成の枠の「Outside」に向かいたいというクリエイターとしての本能もこめられているのではないでしょうか。


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