So-net無料ブログ作成

The Chemical Brothers - Push The Button [Artist A-C]

突然ですが、筆者は化学メーカーに勤めています。「化学(Chemistry)」といって連想されること。たぶん高校までのややこしい亀の甲のたくさん出てくるゾッとする科目といったあたりでしょうか。事実よくわからない業界ですし、作っている製品を紹介するのも骨が折れる。実験室でやっていることは、それこそ漫画のようなところがある。得体の知れない物質Aと物質Bをフラスコに入れて、どんどん熱していくと、もっと不思議な物体Cになる。煙がもうもうと立ち上るフラスコから、ドロドロとした変な液体が流れ出てくるイメージ。ほとんどそのままですね。

醍醐味は、AとBから何が生まれるかわからないわくわく感。よく料理に似ているといわれますがちょっと違う。茄子と牛肉を炒めたらおいしいおかずにはなりますが、豆腐に変身したりしない。化学はその豆腐にできてしまう可能性がある。レシピしだいではフォアグラにだってできるかもしれない。むしろマジックに近い。何しろ「錬金術」が起源なのですから。

何になるかわからないとは、一方ですごい危険と隣り合わせであることをも意味しています。「暴走反応」という言い方をしますが、それこそフラスコが爆発したり、火を噴いたり、フラスコの中で突然石の塊のように変質してしまって、機械が壊れたりする(そういうのを「オシャカ」といいます)。このスリル/危険と引き換えのわくわく感だからこそ、面白いのかもしれません。筆者もたくさんオシャカを作ってきましたし、世の中にちょっとは役に立つ新しい素材を作ったりもしました。ひとつは燃やしてもダイオキシンを発生しないプラスチック材料です。フォアグラほどではありませんが、カロリーゼロのチョコレートケーキといったあたりでしょうか。

Chemical BrothersはもともとDust Brothersと名乗ろうとしていましたが、筆者の中では断然「Chemical」です。なぜなら彼らは音楽の化学実験屋だからです。初期2作であるExit Planet Dust、Dig Your Own Holeは、ロックとビートの化学反応の偉大なる成果物。それまでのロックとビートのテーマは、ロックの観念的な衝動性を、肉体的なビートのもとで解放することでした。ケミブロは、ギターリフやリズムといったロックの音楽的な構造を、ダンスビートの様式でブーストすることで、衝動力そのものを破壊的なレベルまで引き上げた。誰も聞いたことのない新たなエネルギーの放出の仕方にみんな唖然とした。時に「暴走反応」をも扱ってしまう大胆さが、彼らの醍醐味です。

それ以降も彼らは次々に実験を繰り返している。Surrenderでのサイケ、Come With Usのファンク。ぶち込めるものは次々とフラスコに入れて何が出てくるかを模索してきた。最近作である本作でも彼らのフォ-ミュラに終わりはない。常に新しい視点を求めるように、インディアンからインダストリアルまで、いろいろな素材を試している。これまでにオシャカがなかったわけではない。スタイルとして安定化してきたので、常にサプライズを生み出すのが難しくなってきているのも事実。しかしまだ化学反応の先に、わくわくする何かがあるに違いないと信じ、あくなき探求を続ける彼らの姿勢は大いに評価したい。彼らが新作を発表するたびに、出てくるのがオシャカか、爆発か、それともダイヤモンドかを、わくわくさせてくれるうちは、Chemical Brothersは大丈夫です。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 2

きっとすごいお仕事をされているんだろうなぁ、と思っていましたが、化学だったのですね。理数系がだめな私は、ほんととても尊敬します。
こういうジャンルだと、出した時点がその作品のピークなんじゃないかと
思いがちでしたが、彼らの曲は何年後とかに聴いても、やっぱりかっこいいなと思わされます。
by (2006-09-30 20:14) 

ezsin

いやいやそんなたいそうなものではありませんよ。
しがない社会人です(苦笑)。
ちょっと変ですよね。まあこれでラジオ局に勤めてますとか、新聞社で記者やっていますだったらなるほどかもしれませんが、よりによって化学とはねえ・・。

ありそん仰るように、こういう作品は時代の空気にピンポイントにあわせてきますよね。そこに徹する潔さにも感心しますが、こうして時間を経ても聞かせてしまうのは、どこか普遍的なところにも焦点が合っているからなのでしょうね。Chemical Brosははずさないです。
by ezsin (2006-09-30 21:12) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0