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The New Amsterdams - Story Like A Scar [Artist M-O]

夜8時、帰宅ラッシュで混みあう各駅列車の中。襟ボア付きの防寒着を着た労働者風のおじさんが、お酒のにおいを漂わせながら乗ってきた。太くて短い皺だらけの指にはワンカップが握られていた。おいおい勘弁してよ。目の前に立たれてしまった筆者は思わず眉をひそめる。せっかくNew Amsterdams聞いてたのに。

ずっと長いこと聞いてきたのに、うまく文章にできないでいたアルバム。アコースティックで、メランコリックで、とっておきのインディーバンド。そんな風に普通に書けばいいのにできないでいた。どこか控えめで申し訳なさそうなたたずまい。シンとした心細さ。その微妙なニュアンスの本質をずっとつかもうとしてきた。

ワンカップを飲み終えたおじさんは、肩からかけたカバンにがさがさと手を突っ込み、アルミのフタを取り出すと、空になったカップの中に詰め込んだ。続いてがさがさとプラスチックのフタを取り出すと丁寧にガラスにフタをして、自分のカバンの中にしまいこんだ。椅子の下に無責任に置き去りにしていくに違いないと思っていた筆者は、ちょっと驚いて、そんな風に思った自分を恥じた。そうだね、いいじゃないかワンカップぐらい。

もしかしてこの感覚なのかなあと思った。きっと僕達は周りのみんなに迷惑をかけている。自分のしたいことは、そのままとなりの君のいい迷惑。少しずつみんな傷つけあっている。そんなことを思うだけで、遠慮してしまう、躊躇してしまう。せめて空いたカップだけは自分で片付けようと思う。New Amsterdamsの、「ときどき元気、ずっと控えめ」の心はそんなところにあるのかもしれない。

Small Crusade。あまりに繊細でところどころ引きつったようなサウンドは、そのままむき出しの痛々しさ。僕達の小さな反対運動、小さな十字軍は、君を傷つけてしまう。けれどもそれがコミュニケーションというものだし、そんな方法でしか僕は君と話ができないんだ。

駅で降りて改札を抜けると、渡り廊下の窓から線路の先をじっと見つめているおじさんがいた。このおじさんもワンカップを飲んでいた。視線の先を追っても何も見えない。小雨がぱらぱらと窓にあたっていた。New Amsterdamsを聞いていると、見えなかったものが見えてくる。いや、そこにある些細なことが些細なこととして見えてくる。そんなことを感じるとてもワンカップな一日でした。


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