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U2 - How To Dismantle An Atomic Bomb [Artist S-U]

U2は常に自分たちを様々なシチュエーションの中に投げ込み、進化してきた。アイルランドの紛争の真っ只中で産声を上げてから、冷戦などの世界的な構造欠陥に疑問を持てば、自らをベルリンに置く。音楽的なルーツに疑問を持てばGracelandまで行き、直接B.B.Kingに詰め寄る。大量消費財としての自分たちのあり方が問われると、自ら巨大なPopmartを開き、メガキャラクターに変身する。その格闘を通して彼らは新しい音を掴み取り、雪だるま式に大きくなってきた。

よく政治的なバンドといわれますが、そうは思わない。彼らは政治そのものに興味があるわけではなく、「政治対音楽」の真剣勝負の中で、音楽の勝ち負けをはっきりさせたいのです。先に挙げたどんなシチュエーションにあっても、彼らはロックバンドのスタンスを崩さない。常に音楽をもって臨み、音楽としての答えを求めている。そんな勝負の繰り返しの中で切磋琢磨された音楽だからこそ、私たちの心を真剣に捉えるのです。

私たちはなぜ音楽を聞くのか。なぜ音楽を必要とするのか。突き詰めればU2は、私たちが音楽を欲する根源的な混沌の中に自分たちを投げ込み、その中で実証実験を繰り返している。音楽が究極の答えだと信じ、その途方もない仮説を実証する作業をずっと続けている。どんな状況下にあっても「やはり音楽なのだ」と確信できる音を求めて。

一リスナーとしてU2に接するとき、私たちは自分自身の混沌の中にU2を招き入れる。少なくとも筆者はそんな風にしてきた。途方もない期待を持ってU2を待ち、すべてを委ねて答えを彼らの中に求める。彼らのスケールは、そんなリスナーの身勝手な想いをも引き受けるほど大きかった。Joshua Treeで私たちは宗教を超えた音楽を耳にし、POPで物欲主義の先の快楽を耳にしてしまった。「君がいてもいなくても生きていけない」ことを知り、「捜し求めているものは永遠に見つからない」ことも知ってしまった。答えは彼らの音楽の中に見出せたのです。

そこまでになってしまったU2に未来はあるのだろうか。私たちは今以上さらに何を音楽に求め、何をU2に求めればいいのか。本作を聞いているとますますそんな思いを強くする。その名のとおり、「ハウツーもの」として機能化していくのか。
How To Disarm The Northern Penninsula(北の半島を非武装化する方法)、
How To Put A Lid On The Ozone Hole(オゾンホールにフタをする方法)、
How To Bear Love With The Most Loved(最も愛する人との愛に耐える方法)、
How To Cope With A Big Band Like U2(U2みたいな巨大なバンドとうまく付き合う方法)。

一方で音楽は無力。音楽は何も変えない。音楽は決して発射されたミサイルを止めることはできない。腹に巻いた自爆用のダイナマイトを取りはずことはできない。この物質世界に対しての物理的な無力さにいちばん敏感なのもまたU2であったりする。

この巨大な矛盾が究極のU2のテーマであり、もしかしてデビュー時からそのことに挑戦しながら、ちゃんと答えないままにここまできてしまったという恐怖があるのかもしれない。国家よりも、宗教よりも、私の人生よりも強いものとして音楽を提示しておきながら、ハウツーものとしてすらも機能しないほど非実用的。触れてはいけない最後の問題。彼らが取り組むとすればもはやそれしかないのかもしれない。

Miracle Drug。所詮かなわぬ夢ならば。U2党がイラクで政権をとり、Oneを歌いながらみなが復興に励む日。U2病院でOne Tree Hillを聞いた筋ジストロフィー患者が治癒してバンドを始める日。U2教徒の歌声が天に届いて砂漠に雨が降り、アフリカ難民の渇きが満たされる日。そんなバカなことが起こるはずもない。しかしそんなバカなことに思いを託すことのできるバンドがあるとすれば、それはこのバンドをおいて他にない。つまるところ音楽は私達の夢であり、私達の信仰である。ならば本当にそこまで信じてしまっていいのではないか。少なくともそれがU2ファンとしての特権であり、それ以外にファンでい続ける方法がない気がする。

How To Dismantle An Atomic Bomb(原子爆弾を解体する方法)。改めてじっとタイトルを眺めていると、案外彼らも覚悟を決めたのかもしれないと思ったりします。


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コメント 2

ミュージックステーションを見ましたが、さすがU2!という感じのロケーションと演出だと思いました。かっこよくてきれいでした。
by (2006-12-04 19:56) 

ezsin

MS見逃してしまいました。最初の公演のチケットはちゃんと持っていたのですが、キャンセル後の埼玉公演は事情でいけませんでした。残念。けれど直接見れなくても、どこかでがんばっていると思うだけで満足なバンドだったりします。
by ezsin (2006-12-04 21:20) 

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