So-net無料ブログ作成

The Postal Service - Give Up [Artist P-R]

エレクトロニック・ポップですが、Postal Serviceは、音の選択にすごく気を使っている。一音一音がもたらす心理効果の裏の裏まで考えているような。それは、古いピンボールであったり、メリーゴーラウンドであったり、オルゴールであったり、昔のニンテンドウのゲーム音であったりする。人工的だけれども、親しみがあり、ぬくもりがあり、決して人に害を加えない。

この安心感は、どの音も人と触れ合うことに関係しているから生まれるのだと思う。ボタンを押すことに反応してピンボールは音を出し、木製の馬に身体が揺られるそばからメリーゴーラウンドの音は流れてくる。小さなハンドルを指で回すと、金属製のロールが回ってオルゴールは動き始め、コントローラーの動きに合わせてゲーム機はピコピコ声を上げる。

Postal Serviceの「触れる感触」は音だけでなく、ボーカルワークからも伝わってくる。エコーなどの処理を施さず、すぐ耳そばでささやくように歌われる。この至近距離の息遣いが、人工音にやわらかさを与えている。

一方で、彼らの音楽は楽観しない。暖かいけれども、癒してはくれない。まるで何もできないことを悟っているかのように一人称で進行していく。これも彼らが考えるエレクトロニックの側面。ピンボールも、メリーゴーラウンドも、オルゴールも、その音の源に人はいない。プログラミングされたとおりに機械仕掛けで発生させられる音に、本当の人のぬくもりは宿っていない。そのことをわかった上で選択している。

We Will Become Silhouettes。僕たちはシルエットになる。オルゴール調のこの曲が奏でるのは、人間のぬくもりが、光と影の形だけに変わっていくはかなさ。生物と無生物の境界線上での命の揺らぎ。この微妙なニュアンスを伝えるには、オルゴールの音しかありえない。彼らの音選びのこだわりはまさにこの点にあるといえます。

それでもポップに留まるところがいい。私たちはいつかは光と影のシルエットになってしまう。けれどもそのはかなさこそ私たちそのものであり、彼らの音楽はささやかにはかなさを賛美しているのです。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0