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Explosions In The Sky - Suddenly I Miss Everyone [Artist D-F]

ポートレートと風景写真との違い。例えば富士山を背景に家族で写真を撮れば記念写真になり、誰もいなければ富士山の写真になります。ボーカルのないインストゥルメンタル音楽を「風景的」と感じるのは似たような心理がはたらくからでしょう。存在感のあるボーカリストという「被写体」がいないと、背景のすべてのサウンドがじんわりと浮かび上がって全体にフォーカスが合っていくのです。

本作のExplosions In The Skyのようなロック・インストゥルメンタルはちょっと違う。様々なギターサウンドが幾重にも織り合って重厚な響きを奏でていく構築的な音楽は、完全にロックの王道をいっている。しかしだからこそ、ボーカリストの不在が目立ってしまう。なぜここで歌が入らないのか、叫びがないのか、言葉がないのか。普通のインストゥルメンタルのようにすんなりと背景にピントが合わない。なぜなのか。それはひとえに彼らの場合は「主体の不在」が中心テーマだからです。

意識的に抜かれてしまったボーカル。声を持たないハンデ。直接的コミュニケーション手段の放棄。そこに生まれる不自由さともどかしさに彼らはこだわる。伝えられない制限の中だからこそ、徹底的に磨かれていく音の表現力。言葉にしないことで生まれる意味の多義性。最初から前提としてある風景写真ではなく、ぽっかりと真ん中の被写体を抜いてしまった写真だからこそ生まれる独特の表現世界。豊かに展開するダイナミックレンジのスケールと、喜怒哀楽の定義不能の複雑な情感は、「そこに何かが欠けている」という切迫感が生み出しているのです。

欠落感は、あらゆる表現の本質です。絶望、苦悩、怒りなどのネガティブな動機。その裏返しとしてある夢、希望、愛などのポジティブな目的。表現はいつも欠落の回りを振り子のようにいったりきたりしているのです。

思えばこれだけ彼らの音楽のことを書けるのも、彼らの音楽に「歌」がないからです。また、これだけ必死に音楽を文章化しようとしているこのブログも、肝心の「音」がここにないからできることなのかもしれません。


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