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Various Artists - Fifteen Minutes: A Tribute To The Velvet Underground [Artist Other]

The Velvet Undergroundも語るのが難しいバンドです。評論家の執拗な追及に常にさらされながら、尻尾を出すことなく、永遠につかまらないでいる。あまたのバンドに影響を与え、カバーされ、どんな時代にも名前が挙がりながら、いまだにちゃんと対象化されたことがありません。

彼らはひとつの「モチーフ(主題)」なのだと思っています。音楽における価値基準であり、研究の対象であり、明かされないなぞ。ちょうどデッサンをするときに使う、石膏の胸像。ミケランジェロのダビデ像や、ギリシア時代の戦士像。何百年、何千年の間に繰り返し繰り返し模写され、研究され、眺められてきた芸術の中心にある芯のようなもの。手垢にまみれて、もはや具体的な意味すら失った、抽象化された象徴。

だからトリビュートアルバムの意味合いははっきりしてきます。スタジオの真ん中に置かれたVelvet Undergroundの白い石膏像。周りを囲んだいっぱしの画家たちが、自分のキャンバスに思い思いにその石膏を写し取っていく。自己鍛錬の場であり、真理の探求の旅であり、神との対決の場でもある。汗をだらだら流しながら必死に模写に取り組むミュージシャンたちの息遣いが、本作にはしっかりと刻まれています。

18世紀に描かれたダビデ像のデッサンと、キュビズム時代のそれとが大きく異なるように、本作も作られた年代の影響が色濃く反映されています。

時は90年代中期。Nirvana、Swervedriver、Buffalo Tom、The Wedding Present、Fatima Manshions、Ride、James、Screaming Trees。グランジのうねりに精神がびりびりと引き裂かれていたときに、その真っ只中にいたアーティスト達による、正気の極北として捉えられたVelvetsの解釈がここにはあります。

悲痛を悲痛としてさらけ出すことで、解放と同時に行き場を失ってしまったわたしたちの感情。自虐的にそのジレンマの中にとどまり続けて、現実を認識することがグランジの本質でした。European SonもAll Tomorrows PartiesもHere She Comes NowもJesusも、痛々しいほど音が迫ってくる。本当に刃物で体を切りつけるように、ギターはひずみ、叫び声はかすれていく。しかしなんとそれが耽美的で快楽的なことか。この時代の解釈が、もっともVelvetsの本質(そんなものがあるとすれば)に迫ったということができるかもしれません。

芸術作品が、本物重視による希少性で価値をインフレートさせているように、本作も今では入手が困難な高額作品となっています。珠玉のテイクの数々は断片的に他でも聞くことができますが、ここにしかないものもある。ネットによって流通コストが限りなくゼロになってしまった今だからこそ、物理的な制約の中で価値をとどめている本作の存在は、ある意味で正しいのかもしれません。「Velvet Undergroundの本質を描いたFifteen Minutesは、いまや伝説の中にしかない」。そんな形容詞はVelvetsにこそ似つかわしいものだからです。


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鯉三

お見事!とてもおしゃれで、しかも可愛いヘッダーです。
Velvet Undergroundの曲では大変月並みなのですが、学生時代に繰り返し聴いたSUNDAY MORNINGが一番好きです。LOU REEDのあまり上手でない、そしてとても短いギターソロが流れてくると今でも目が覚めるのです。
by 鯉三 (2007-02-02 01:43) 

gag_hiyokko

このトリビュート・アルバムは聴いたことがないのですが、「Velvet Underground=モチーフ(主題)説には大いに納得です。

Velvet Undergroundは、大学に入りたての頃に「The Velvet Underground And Nico」を買って初めて聴いたのですが、それまで読んでいた音楽評論家の文章などから、かなり実験的で難解な作品を予想していました。ところが、1曲目の「Sunday Morning」は、実にポップな名曲で、驚かされたものです。最終曲の「European Son」などは、実験的ではちきれんばかりの熱を孕みながらも実にクールという、それまでに聴いたことの無いタイプの音楽で、衝撃を受けたのを覚えています。

現在、最もよく聴くのは3rdアルバムの「The Velvet Underground」ですかね。アートワークから受ける印象そのままに、実に美しい作品です。
by gag_hiyokko (2007-02-02 12:33) 

ezsin

鯉三さん:
ありがとうございます。鯉三さんに触発されて作ってしまいました。ネタの使いまわしですが・・

Sunday Morningは永遠に初々しいですよね。私も大好きです。これだけ重くて暗いイメージの濃いバンドなのに、この曲は不思議とどんな明るいバンドの音よりも清らかです。
by ezsin (2007-02-02 21:58) 

ezsin

gag_hiyokkoさん:
3rdは美しくて確かに今の時代に一番フィットするのかもしれませんね。ある意味では露骨にハードな曲よりも、神経の奥底までしびれさすのかもしれません。
by ezsin (2007-02-02 22:01) 

こちらを開いたとたんに、微笑んでしまうようなポップでキュートなデザインですね。また一段と、読み応えがあります。学生時代、ちょっとしたことから興味を持って、レンタル屋さんであるだけ借りて来て聴いたのが最初でした。「Sunday Morning 」は、携帯の目覚ましで使うこともあります。「Femme Fatale 」が最も好きかなぁと思います。
by (2007-02-03 22:28) 

ezsin

ありそんさん:
ありがとうございます。
携帯の目覚ましのSunday Morning!ステキですね。本当に朝の陽光にぴったりのキラキラ感があります。Femme Fataleはありそんお好きなREMのすばらしいカバーがありますよね。どっちもカラダのすみずみまで染み込んでいます。
by ezsin (2007-02-04 14:06) 

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