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Morten Lauridsen - Lux Aeterna [Artist J-L]


中学の音楽の先生はとても涙もろい人でした。背の小さい、黒縁の大きなめがねをした情熱的な男の先生でした。合唱曲をクラスに歌わせて、きれいにハモったりすると、顔をくしゃくしゃにして涙を流した。授業中にでもお構いなく。ツッパって喧嘩ばかりしているヤツを無理やりクラスにつれてきて、一生懸命に歌わせようと説得したりもした。「先生、そりゃ無理だよ」とクラスの誰もが思うなか、根負けしたヤツがいやいや歌いだしたのをよく覚えています。意外に通りのいいアルトの声をしていると知ると、またぐっと声を詰まらせてうるうるしていた。まるで金八先生ですね。

こんなんですから、卒業式のときの合唱はもう大変。そりゃ本格的で、「翼をください」だけではなくて、ヘンデルのハレルヤを歌う。1ヶ月ぐらい特訓した成果を、学年一体となって体育館に響かせる。先生だけでなくて、生徒もみんな歌にならない。いちばん嗚咽していたのが例のツッパリくんだったりして。思い出してもすごい光景です。

それだけ合唱には力があります。声と声がハーモニーとして調和したときの感動は、ちょっと例えようがない。人は何のために声を出すようになったか、たぶんコミュニケーションのためでしょうが、共鳴しあう歌声はそんな人と人のつながりのもっとも美しい形なのではないでしょうか。

Morten Lauridsenは、デンマーク系のアメリカ人作曲家。中世のポリフォニーに基づく合唱曲を多く手がけている。南カリフォルニアで教鞭をとる現役の先生でもあります。

本作は、ミサの体裁を持ったLux aeterna、ラテン詩に歌をつけた作品、そしてアカペラの数曲からなるHyperionレーベルからの超高品質録音盤。

現代にあってこのスタイル。一見、音楽史の進歩を無視し、何の批評性をも持ち合わせていないように見えます。しかし、この有無を言わせぬ荘厳にして清爽なハーモニーを聞いていると、そこに別の意義が浮かび上がってきます。

宗教的な色彩を帯びているものの、儀式的な堅苦しさはない。オーケストラも、映画音楽のような詩情をたたえていて、もっとエモーショナルな動機に裏打ちされた作品だと気づかされます。

Morten Lauridsenはここで音楽史の進歩を目指しているわけではない。むしろ中世において見出された「声の力」に特別な思いを込めている。対等に声を重ねていくポリフォニーの方法論に、声の失われてしまった殺伐とした現代を救うヒントを見ているのかもしれません。

言葉も、言語も多様化した現代。世界はつながって、情報は瞬時に行き来する。しかし、わたしの言葉とあなたの話は、通じているようで通じていない。膨れ上がった情報と溢れかえる言葉の中で、溺れかかっているわたしたちから、本当の声は出ていないのかもしれません。

今一度、大きく息を吸ってお腹のそこから歌ってみよう。となりのあなた、あそこのあのひとと、声を重ねてみよう。そこに忘れていたハーモニーのマジックが立ち現れる。声帯の震えがそのまま心の震えとなって、麻痺していた感情が開放されていく。もしかしてそこに涙のひとしずくも落ちるかもしれない。ひとりだから泣くのではありません。人とつながるから涙する。こんな感覚をわたしたちは本当に長いこと忘れてしまっています。


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コメント 2

中学、合唱と聞くと、とても懐かしい気持ちになります。私達は、女性のとても優しくて楽しい先生でした。なんだか色々な人や事を思い出しますね。
by (2007-02-15 00:30) 

ezsin

音楽教室ってどこか雰囲気が違って、なごんだ記憶しか残っていないです。あの時以来、気持ちよく歌ったことがない気がします。一人の世界に入るカラオケとは違い、仲間と歌うことっていいなあと改めて思います。
by ezsin (2007-02-15 01:07) 

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