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The Carpenters - A Song For You [Artist A-C]


バレンタイン・デーはかなり異様な日です。チョコレートメーカーの陰謀とわかっていつつ、何かに突き動かされるように群集心理がはたらき、否が応でも喧騒の片棒を担ぐことになってしまう。冷静に割り切りながらも、心のどこかで恋愛の胸騒ぎを意識し、期待し、行動してしまう。ただそんなに目くじらを立てることはありません。そもそも恋愛は妙なものなのですから。

The Carpentersのポップ・ミュージックもどこか異様です。あまりに美しすぎる。それはこのデュオの数奇な運命と無関係ではありません。KarenとRichardの濃すぎる関係。創作上の不可分なパートナーシップ、通常の恋愛関係を超えたプラトニックな愛憎感情。様々なことが言われますが、本当かどうかにかかわらず、彼らの奏でる音楽には同じ濃さが詰まっている。

Karenの拒食症。あまりに悲劇的なこの出来事も、彼らの音楽のアプローチの中に既に暗示されていました。彼らの音楽の突き詰め方は尋常ではない。徹底的に追求されるKarenの声の透明さと、一点の曇りもない明るいサウンド。これはもう悲しいくらい病的なのです。

Top Of The World。彼らがそこにたどり着き、眺めた景色とはどんなものだったのでしょう。きっとこの世にありえない光景だったに違いありません。Song For Youに歌われる愛は既に普通ではない。完璧ゆえに感情すらわきあがらない。止めることのできない、暴走し始めた極端な美の形。そこにはもう生身のあなたもわたしも存在しないのです。

だからこそ、戦慄が走るくらいこのアルバムはとんでもない。いまだかつてこんなところまで行ってしまった作品はありません。愛情と美の行き着く果ての世界のなんと恐ろしいこと。そこには想像すらしなかった空虚が顔を覗かせているのです。

ときめきの先に待つものを、わたしたちは知ってしまった。それでも今日もバレンタインの悲劇の波に飛び込んでいく。Carpentersの空恐ろしい音楽があるからこそ、安心して飛び込んでいけるのです。


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