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Bryan Ferry - Dylanesque [Artist D-F]

なぜDylanなのだろう。
Bryan Ferryのニューアルバムが全曲Bob Dylanのカバーであることがわかってから、2つの問いがずっと頭にありました。ひとつは、Bryanにとってなぜ今ここでDylanなのかという問題。もうひとつは、わたしたち聞き手が、なぜBryan Ferryを通してBob Dylanを聞かなくてはいけないのかという問題。いずれもかなり悩ましい。

Bryanはカバーに比較的気軽な人です。Roxy時代からソロ名義でカバー集を出していたし、ジャズ・スタンダードだって歌ってしまう。Dylanだって今に始まったことではない。彼にとっては「十八番」みたいなもの。

しかし今回のBob Dylan集は違う。なんか凄みみたいなものを感じます。

いくらMarks & Spencerのモデルになったからといって、いい気になっている場合ではありません(次にLEONが狙っていたとしても、乗らないで下さいよ)。Roxyリユニオンをやっても、「そろそろネタ切れか?」と揶揄されるだけです。

はっきりいってもうおじさんなんですよ。61歳。団塊の世代より一足早く、もう定年になっている年齢です。ダンディー気取りでいたって、もうサマにならないですよ。

かすれ声そのままに歌うMake You Feel My Love。一番のラブソングなのに、らしくない。どうしたのだろう。音は全編、もう、力に満ちている。明るめのアレンジが、彼独特のエコーがかったデカダンな処理を超えて前面に出ている。クリアすぎてまぶしいくらい。

潔く白日の下にさらされたポジティブなディラン・ソングの力と、老いて声の出ない枯れかかったプレイボーイの自分。自分自身に問いかけているような作品です。

Bob Dylanは、デビューしたはじめから70歳の老練な悟りを持っていました。おのずと彼の曲は、時代や年齢の束縛を離れて、人類を俯瞰する場所に位置しています。その曲を取り上げるのは一種の「挑戦」。相応の覚悟がいります。

Dylanesqueは、Bryan FerryによるDylanを通した自己認識の試みです。61歳になってロックする自分とは何か。40年間、変化することなく君臨し続けるロックの完成形としてのBob Dylan。40年間、創造し、悩み、走り続けて変わり果てた生身の人間としての自分。改めてDylanの作品に向かうことで、ロックする必然を掴み取ろうとしているように筆者には映るのです。

さて、そんなDylanesqueを聞くわたしたちはどうでしょう。わたしたちはBryan Ferryを聞いているのでしょうか。それともBob Dylanを聞いているのでしょうか。たぶん両方です。ここにはDylanに立ち向かおうとする真摯なロックスターの生き様がある。ここにはまた、誰も見たことのないBob Dylanの姿がある。行き着くところまで行き着いて仙人化したDylan本人からは決して解き明かされない、老成と苦悩の中で光り輝くロックの新たな形があるのです。


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コメント 8

鯉三

この新作、まったく期待していません。やっぱり買ってしまうとは思いますが。何せ久しぶりなので。またカバー、しかもまたディラン。まあ、誰のであってもカバーはカバーなのであまり関係ないかもしれませんが。
フェリーはディランの枯れた部分が好きなんでしょうね。本人は枯れることに憧れているのだろうけど、それは一生できそうにない。本人自身が一番よく知っていることでしょう。

いずれにしてもカバーを出した次は、オリジナルです。今回のリハビリは荒治療となるのか、それとも再び老いに拍車がかかるのか...
by 鯉三 (2007-03-05 01:17) 

ezsin

確かに、所詮はカバーなんですよね・・
久しぶりなので思わず力んでしまいましたが、冷静な鯉三さん仰るようにちゃんとオリジナルで勝負しなくちゃ。作れるのかどうか、やや不安・・

フェリーさんがカバーやるときってやっぱりシンガーという意識が強いのかなあ。彼は役者みたいなところがあって、いろんな曲を「演じる」ことで自己表現するパターンがしっかりありますよね。これはオリジナルやロキシーの時のスタンスとは違う。ファンは(大きい声じゃ言わないけど)後者を期待しているのに、本人は前者に執拗にこだわる。自分の中で何らかのバランスを取っているのでしょうね。
by ezsin (2007-03-05 01:30) 

deacon_blue

☆ 別のブログにも書きましたが,このオジサンにはお爺さんになっても枯れて欲しくない。「どうせなら立ち枯れしなさいブライアンフェリー!」(←大前春子流^^;)
by deacon_blue (2007-03-05 12:53) 

ezsin

それはスーパーハケンなみなパフォーマンスを要求されますね。
まあ枯れることはないと思うんですけど、ちゃんと体力はつけておいて欲しいと思います!
by ezsin (2007-03-05 23:19) 

kazz12000

こんばんは、トラバさせて頂きました。
本人も「〜『曲を書かなきゃ』的なプレッシャーから解放してくれるしね」なんて言っていますし、フェリーさんにとってカバー・アルバムは次期オリジナル・アルバムへのリハビリみたいなものなのかもしれませんね。
こうなったらとことん付いて行くので、またフェリー節満載なオリジナルな自己陶酔・ダメダメ・ラブソングを作って欲しいと思います。
by kazz12000 (2007-03-12 23:46) 

ezsin

kazz12000さん、コメントありがとうございます。仰るようにリハビリなのでしょうね。年を取ると作曲もなかなか思うようにいかないのでしょうか。もちろんこういう寄り道の中からアイデアとかも生まれるのでしょうけど。
ダメダメ・メソメソ・なりきりワールドに入る前の準備体操なのかもしれませんね。
by ezsin (2007-03-13 21:26) 

鯉三

このアルバム、まったく期待していないなどと言っていたのに、かなり聴き込んでいます。You Tubeのライブ映像も繰り返し見ています。すごくかっこいいと思います。本気ですね、フェリーさん。バックの面々も素晴らしい。三本のギターの掛け合いとフェリーの枯れたボーカルが、今までにないスリリングさを生んでいると思います。

フェリーさんは健在だ。
今回あらためてezsinさんの記事を読んで、その思いを強くしました。ロキシーの新譜が出るという噂もありますが、本当に出たらきっと期待を裏切るものになっていると思います。「AVALONの面影」という期待を裏切ってくれるはずです。
by 鯉三 (2007-05-01 22:51) 

ezsin

期待をいい意味で裏切ってくれることはアーティストの生命線ですよね。
かなり気合を入れていることがひしひしと伝わってきます。
今まであまり「気合」みたいな言葉が似合わない人でしたが、これもいい意味で裏切ってくれている。健在でいるためのひとつの覚悟なのでしょうけど、全面的に支持したくなります。
by ezsin (2007-05-02 20:42) 

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