So-net無料ブログ作成

Jimi Hendrix - Are You Experienced [Artist G-I]

この有名なJimi Hendrixのデビューアルバムを聞いて思うことは、この人のスケールの大きさに音楽が追いついていないということです。とんでもないアルバムではあるのですが、Jimiに内包していたものはそれよりもはるかに大きかったのだと認めざるを得ません。

60年代に、なぜあれほどギタリストがもてはやされたのでしょう?
Jimmy Page、Eric Clapton、Jeff Beck、Keith Richardなど、「名ギタリスト」と名のつく人は枚挙の暇もありません。もちろんJimiが火付け役ともいえますが、ブルースをルーツとしたギタリストに、なぜこれほどスポットライトが当たったのでしょう。

ひとつには、エレクトリックギターとその奏法に、ものすごく大きな表現の可能性を見たことが挙げられます。爆発的なエネルギーの放出から、繊細な心の動きまで、今まで誰も耳にしたことのない、文字通り「言葉で表されない」感情・感覚をその音が表すことができるとみなが思った。

確かにこの時代に開拓されたギターのテクニックや表現手法は、その後のロックの歴史の基礎となったといっても過言ではありません。しかし、冷静に考えてみれば、ひとつの楽器にできることは限られています。ソロはソロでソロでしかない。そこに込められた思いは様々だったかもしれないが、全てではありえない。くねくねする奏者とまぶしいスポットライトの中、変幻自在の音色に幻惑され、わたしたちは容量以上の期待をかけ過ぎはしなかったか。ギターが世界を救うと勘違いしなかったか。ギター教祖の催眠術に乗って、ふらふらとウッドストックに集ってしまわなかったか。

ギターの表現の可能性とともに、その限界を一番よく把握していたのはJimi Hendrixだったと思います。創造力の臨界点で沸騰する本作での演奏を聞いていても、彼の求めている音楽がギターだけで表現し切れているとは思えません。多様な楽曲群、太くずんと響く声、緩急自在のリズム。あらゆる手段を使って、自分の中にある音楽を表出させようと必死になっている。その先端でもっともビビッドに彼の感性を伝えていたのは間違いなくギターですが、そこに満足できないもどかしさの泡が、ぶくぶくと沸いているのを感じるのは筆者だけでしょうか。

それでもここに出現してしまった音はものすごいものです。あえて言葉にするとすればそれは「なまめかしさ」。鋼鉄のように硬い確信に満ちた音とともに、エロティックと表現してもいいほどのぬるっとした粘り気。この両者がある種の形で融合したもの。Jimiが追い求めた彼自身の内面にあったのは、きっとそんなバケモノだったに違いありません。その完成形をわたしたちは知るよしもありません。

彼のもどかしさを考えると、彼がステージでギターに火をつけた意味も何となくわかってきます。ギターは彼にとって、自分に火をつけてくれるエネルギーの源である一方、自分の表現を完全には成就してくれない燃やしてしまいたい忌み嫌うものでもあった。可能性と限界。炎の中に創作の矛盾と葛藤を見つめていたのでしょう。

なぜギタリストがもてはやされたか?
もうひとつの理由は、日本刀を持つ侍のような威厳です。使いこなすには高度な技術を要する危険な武器。周りをバッサバッサと切り裂く爽快感と、大立ち回りの劇場効果。ロックのヒロイズムをこれ以上見事に体現するものはありません。

Jimiの刀はよく切れた。おそらく古今東西、一番の剣士だった。それゆえに切るに切れないもどかしさは大変なものだったのでしょう。刀の限界を知りながらも、剣の道を歩まなければいけない宿命。彼の全作品を通して感じられる焦燥感は、彼の人生をかけた立ち回りの風の音なのだと思います。

そして最後はその刃で自分の腹を切って果てた。

もちろん彼は自殺したわけではありませんが、どうしても筆者には、ギターを自分に向けて切りつけたと思えてしまうのです。

それはなまめかしさと鋼鉄のイメージから、同時代の三島由紀夫が脳裏をよぎる瞬間でもあります。


nice!(1)  コメント(6)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 1

コメント 6

Yeah!!!!

ジミに関しては言葉に出来ない領域にいると思ってたのですが、今日ezsinさんの文章を読ませてもらって、初めてしっくりきました。そうか、そうだな、の一言です。
by Yeah!!!! (2007-03-20 09:22) 

deacon_blue

☆ 時間が無くなったので手短に書きますが,ジミは自分自身を突き詰めちゃいけない人だったのだと思います。後ほど続きを書きます。
by deacon_blue (2007-03-20 13:00) 

ezsin

Yeah!!!!さん、ありがとうございます。
突然ばあーっと沸いたような感じで書いてしまいました。
不思議とはじめての経験です。書けるなんて思っていなかったので。
書いたとたんにまた先のほうにJimiが行ってしまったような感じもするのですが・・
by ezsin (2007-03-20 22:38) 

ezsin

deacon_blueさん、続きを楽しみに待っています!
by ezsin (2007-03-20 22:39) 

deacon_blue

☆ お待たせしました。ジミ・ヘンドリクスが天才である証拠は,そのギタープレイにあるのではなく音楽の「構想」にあるのだろうと,あたしは思っています。だから,
> Jimiに内包していたものはそれよりもはるかに大きかった
というニュアンスがヴィヴィッドに響くのです。

☆ ジミがもしも生きていたら,彼はボブ・マーリィときっと知り合いになったことだろうと思います。彼らの音楽(だけである事も希望しますが^^;)は,彼の音楽の地平に必ず広がりを持たせたことだと思います。その時,ジミ・ヘンドリクスは「音楽」が表現するものが,ギターだけ,いや音楽だけでないことを知ったのではないか,そんなことを思います。上に書いたように彼は「自分」を音楽で表現し尽くそうとした。それは彼自身が世の中に受け入れられていく唯一の方法だと感じていたからだと思う。そこをショウビズ(スター・システム)につけ込まれて,骨の髄までしゃぶられてしまった。

☆ 音楽によって自分を表現し尽くそうとする「思い」という点では,マーリィにも同じようなところがある。だが両者の運命を隔てたもの,それが何かのヒントになるように思います。二人とも長生きして欲しかった。たとえ最後にスターシステムに飲み込まれ,変なものに成り果てたとしても。。。あたしにはそう思えてならないのです。
by deacon_blue (2007-03-21 19:06) 

ezsin

JimiとBob Marleyとの関連性、興味深いですね。
確かに通ずるものがあると思います。
Bobはうまく表現の核を対象化し、自分との位置関係を把握できていたのでしょうね。その点Jimiは惨めなほど自己と表現とを同一化していった-
二つの失われた命はあまりに大きいです。
by ezsin (2007-03-21 19:42) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0