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Pixies - Surfer Rosa [Artist P-R]

どこかへ突き抜けようとしているアルバムです。
それはおめでたいポップスで彩られた80年代の、どこか甘ったるい空気に対するアンチテーゼでもあり、Pixies自身が感じていた創作に対する苛立ちであったのかもしれません。

せわしないビートは止まることを知らずに、壊れたストップウォッチのように狂ったときを刻む。破壊的なギターは壁にぶつからんばかりのエネルギーを爆発させ、奇声に近い叫び声は断末魔の様相を帯びている。ドラムはいつ落ちるともわからない雷鳴のようにあたりを漂う。パンクのギアははずれ、ポップのメロディは崩れていく。そんな状態をこのバンドは何とかしようと努力しない。

計算され、コントロールされた構造から離れていこうとする。混乱のおもむくままに身を任せ、音を放出させていく。それは、わたしたちの中で眠ったまま、まだ表現されたことのない衝動を解放させようとする試み。投げやりに近い殺伐とした彼らのたたずまいには、はっきりした方向性があったのです。

Surfer Rosaにはそれでもポップな温かみがあり、甘美な感傷が漂っている。
突き抜けることの戸惑いがサウンドに歪として生々しく刻み込まれている。
攻撃的に鋭利なナイフを突きつけてきているようで、その刃先は決して肉体を裂くことはない。裂くことによって突き抜けることと、踏みとどまることで安定することとの瀬戸際。そこで脂汗をかきながら彼らは悩み苦しんでいる。その姿がわたしたちの心を打ち、このサウンドの中に美しい花を咲かせているのです。

このアルバムが垣間見せた、突き抜けた先に広がる新しい世界。
90年代の多くのバンドはその光につられて、新たな表現のステージに立っていった。
グランジ、ガレージ、レイヴ。90年代にロックを解放させてくれた多くのサウンドはSurfer Rosaの出口から巣立っていった。

しかし筆者は、ぎりぎりのところまで行きながら、その混乱の中に取り込まれたままのPixiesに多大なシンパシーを感じます。臆病なのではない。突き抜けてしまえばかえって楽。戻ってしまっては負け犬。その転換点がもつ魔力に引き寄せられ、そのエネルギーを創作の糧とする彼らの姿は唯一無二であり、どこか悲しい存在でもある。

人間にもなれない、天使にもなれない、妖精たち(Pixies)。
彼らの奇妙な歌と踊りを眺めながら、何者にもなれない自分の境遇を重ね合わせる。


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