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Supertramp - Breakfast In America [Artist S-U]

小さいころにはじめて聞いた「変な」アルバムです。
まだプログレも、コンセプト・アルバムも知らない子供にとって、歌いたくなる楽しい曲と、なにやら難しそうな長い曲が混ざって、全体として何か意味がありそうな感じがする本作は、畏敬の念を持って眺める対象でした。

だってわからないんですもん。
単純に楽しいだけじゃない何かがある。きっと大人にならないとわからないに違いない。「アメリカの朝食」ってどんな意味があるんだろう?

「ロック史」的に言えば、プログレのフォーマットを使ったはじめてのポップ・サウンド。それまで堅苦しく哲学的に振舞っていたプログレの、物語性、統一性、記号性、実験性などの要素だけを流用して、ポップ・ミュージックを構築する試み。後にGenesis、Yes、Uriah Heapなどが続いた、「いいじゃん、こういう割り切りがあって」の第一歩。さかのぼればBeach BoysのPet SoundsやSmileにまで行くのでしょうが、本当にポップとしていろいろなしがらみから吹っ切れているのは、本作が最初だという気がします。

そうでありながら、まだ変なアルバムです。
普通じゃない。
思うにこれは「ポップ・サーカス」です。

ポップの要素を使いながら、サーカスを作り上げる。ファルセットのコーラスはピエロのようにユーモラスで、メロディ展開は予測を超えてアクロバティック、唐突に自己主張を始めるジャズっぽい楽器ソロは、「ここまでやるか」的に芸を誇張する。少しだけ意味不明の歌詞は、シュールな場を作り上げ、威勢のよいピアノのスタッカートは見せ場を盛り上げる。すべてが非日常で過剰。でも全体としてわくわくして、ニコニコできる楽しさの基本線を外れない。これはサーカス。深刻ぶってはいけない。

小さいころに「アメリカの朝食」の秘密に感じた魅力は、サーカスの摩訶不思議に感じるものと同等です。

サーカスが拭い去ろうとしても、拭い去れないものがあります。
それはサーカスそのものを定義づける「奇」の空気。ものすごく楽しいけれども、これは普通じゃない、日常じゃない、わたしたちと一緒ではない、という孤立感。
これが悲劇なのか、誇りなのか、異端なのか、個性なのか、安易な感情を付与することはしません。

ただいえるのは、あのころ感じた「奇」は今も変わらない。そしてこの作品ほど「奇」に位置づけられ続けられる作品もないということです。

今日もどこかでテントが張られ、不思議なポップの主人公たちが芸を繰り広げている。それは永遠に続く「超放浪者(Supertramp)」たちのキャラバン。


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鯉三

本当に変な音楽ですよね。なぜか台湾の外国人向けFM放送でたびたびオンエアされるのです。職場のカナダ人の同僚がスーパートランプだと教えてくれました。それ以来、この曲が聞こえるとすぐに反応してしまうので、笑われます。
「ポップ・サーカス」!なるほど、言いえて妙です。
by 鯉三 (2007-05-31 02:23) 

ezsin

台湾でカナダ人の同僚と聞くアメリカの朝食。かなりシュールでインターナショナルですね!いちばんこの音楽の面白さ、摩訶不思議さを感じるシチュエーションかもしれません。
by ezsin (2007-06-01 01:39) 

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