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Fridge - The Sun [Artist D-F]

例えば自分の手を遠くから眺めると、五本の指を持った体の一器官が確認できます。グーッと近づけるとぽつぽつ毛穴が見えてきて、四方に細かく走る皺が見えてくる。分岐したり、交わったり。どこかの街の道路地図を見ているよう。交差点にあるうぶ毛はさながら信号機?。節のところはずいぶん急な坂。サンフランシスコでもこんな坂はない。でたらめなようで、全部つながっているから、必ず目的地には着くはず。ここを走ったらさぞかし面白いだろうな。

The Fridgeの本作は、そんな遠近感と、ミクロな想像力にあふれた作品といえるでしょう。

冒頭の表題曲The Sunと続くClocksは一聴してPink Floydの狂気を連想します。Moonに対するSun。時計のカチカチなる音がTimeにつながるClocks。Pink Floydが象徴性を重視したやや大きなスケールの視点を持っていたとするならば、Fridgeはぐっとフォーカスが絞り込まれている。太陽の日差しの一本一本(もちろんそんなものはありませんが)が地表の小石に当たって反射する様を眺め、秒針の上から一つ一つ文字盤が通り過ぎていくのを眺めているような。

全体としてインストゥルメンタル・ロックの体裁を整えながら、細かい一つ一つの音選びに尋常ならないこだわりを感じます。これはメンバーのソロ・プロジェクトでもあるFour Tetにもつながるテクスチャへのこだわり、細部に宿る本質です。

さまざまな音のぶつけ合い。楽器が何かとか、音程がどうかとかはあまり重要ではない。波長と波長が交じり合い、反発し合い、聞いたことのない音の造形物へと変化していく。刻まれる時間をも文字通りその音の中に刻み込み、Fridgeは、鑑賞者の感覚や意識のいろいろなところを突きながら、総体としての「印象」を形成していく。この緻密なプロセスはメンタルな指圧師のワザと言ってもいい。

細部に創造の可能性を探るこの人たちの試みにとても共感します。フロンティアは何も大局にだけ宿るものではない。大きく未開の森に道を切り開くのも、手の甲に広がる皺の道を走るのも、どちらも同じくらいワクワクするものなのです。


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Entertainment/F

いや~素晴らしいですね。
僕もこの「The Sun」がとても好きなのですが、僕の中で言い表せなかった言葉を見事に表現されていたので感動してしまいました。

これからもちょくちょく拝見させていただきます。
by Entertainment/F (2007-06-19 12:50) 

ezsin

Entertainment/Fさん、ありがとうございます。
お気軽にお越しくださいませ!
by ezsin (2007-06-19 22:59) 

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