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The Temptations - All Directions [Artist S-U]

Temptationsが持つファンクとソウルフル・バラードの両面を堪能することのできるアルバムですが、何といってもハイライトはPapa Was A Rolling Stoneです。

これは「隙間」を聞かせる曲です。
空間だらけのスカスカ。
同じファンクでも、アルバムの頭を飾るムンムンと熱気に満ち、お祭りのように騒がしいFunky Music Sho Nuff Turns Me Onとは対照的。音数少なく、ストイックで、枯れ木のように寒々しい。

もちろんグルーヴがないわけではありません。
ストイックゆえにというべきか、地の底からズンズンと体を揺さぶる。

テーマが重い。
死んでしまったならず者の父親をテーマに、アフロアメリカンのみならず、アメリカ社会が抱える構造的問題を滲み出させる、硬派で告発的な曲です。

ヘビーなテーマを聞き手の中枢にぐさりと突き刺す。
だからこその「隙間のファンク」です。

お祭り騒ぎするためでなく、脳の奥深くに浸透させるための低周波ファンク。
物議をかもすためではなく、考えさせるための空白。

空間に放り出された音は、ぽつりとわたしたちの前に留まる。
否応なしに強調されるのは、その周りに漠と広がる音の埋まっていない空間です。
そこに私たちが投影するのは、根無し草の空虚と、見つめる家族の孤独。
それが刻一刻と時限爆弾のように臨界点に向かって進行していくカウントダウン・ビート。一度耳にすると、Papaはあなたの心奥底に巣食ってしまう。テーマと手法と音楽的完成度が高度なレベルで調和した見事な作品です。

他の甘いバラードとの落差がよく取りざたされますが、両者の対比がアルバム全体の緊張感を高めていることは間違いない。むしろ、バラード群はこの曲を際立たせるためにあるといっても過言ではないくらい。このミックスによる「問題の顕在化」こそがTemptationsの真のテーマだったのでないか、と筆者は思っています。


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