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Kraftwerk - Trans-Europe Express [Artist J-L]

「30年後に届いたメッセージ」
ずっと昔の話ですが、はじめてShowroom Dummiesを聞いたときの衝撃は忘れません。全編冷たい合成音、メロディも何もない「WE ARE SHOWROOM DUMMIESワタシタチハマネキン」の連呼。なぜこんなものが作られるのだろう。恐怖に似たゾッとする戦慄を覚えました。

今聞くと、受ける印象の違いに愕然とします。なんとポップなのだろう。情緒すら感じるやわらかいエレクトロ・ポップ。もっとも質的にも意味合い的にも巷のポップスとは似ても似つかないのですが。

思うに、Kraftwerkはメインの活動期から情緒的なユニットだったのです。誰も気づかなくても、誰にも理解されなくても、彼らはある考えに基づく、ものすごく人間的な音楽を作ろうとしていたのです。

ミニマリスティックで、幾何学的で、社会主義っぽい表層から、当時の大半の人たちは、Kraftwerkに難解で批評的な解釈を加えるか、醒めた目で異端視するか、興味本位でイロモノ的に愛でるかをしていました。

その一方で、みんなゴージャスで、グラマラスで、民主主義っぽい音楽を享受していた。誰もが暖かく、人間的で、ポップなものを追い求めていた。

Kraftwerkにはきっと見えていたのです。表層の裏側に潜む矛盾を。きらびやかなディスコに温かみがないことを。無理に明るい顔をする先に本当の安らぎがないことを。甘いメロディに秘められた偽善を。

あるのは冷たく、機械的な、構造化された社会。その中で規格化され、同質化していこうとする「構成要素」としての人間。

Kraftwerkは、そんな大きな流れにNOを突きつけようとはしません。人間性を取り戻せと言っているわけではない。大きな流れを運命として受け入れ、その先における新しい人間としての情緒性を獲得しようとしていた。部品になった人間のためのポップス。機械仕掛けの中でも感じることのできる音楽を、いち早く確立しようとしていたのです。

30年たってわたしたちがKraftwerkをポップと感じることができるのは、きっとわたしたちが部品になってしまい、歯車になってしまったからです。デジタルな空間が支配的になる中で、わたしたちはもはや昔のわたしたちではない。ようやくわたしたちはKraftwerkのメッセージを本来の意図された形で受け取ることができる存在になったのです。

Kraftwerkが凄いのは、彼らの音楽が悲観的ではないことです。当時は明確には見えなかったであろう、来るべき「デジタル」な世界と、「01化」された人間。そこに前向きで、新しい希望を見ていた。彼らの音楽の基調はあくまで長調。確実に体温を持っている。たとえチタニウム合金になったとしても、わたしたちは36.5℃。この希望の強さは、いつまでもわたしたちを勇気付けてくれるのです。


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ヤゲロー

クラフトワークちらっとしか聴いたことがないんですけど、
すごく興味深く読みました。
以前聴いた時は、あまりの感性の違いに受け入れられなかったんですけど、ひょっとして今聴いたら違う印象を持つかもしれないですね。。
by ヤゲロー (2007-07-28 08:16) 

ezsin

今聞くのがちょうどいいのかもしれませんね。冷たい感じがまったくしなくて、昔は何であんなにびびったのだろうと不思議です。
by ezsin (2007-07-28 22:11) 

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