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Ray Charles - What'd I Say [Artist A-C]

急遽、大量の書類にサインしなければいけなくなったのに、普段使っている万年筆が手元にない。しかたがないので、机の奥からがさがさと古い一本を取り出してくる。Parker製のちょっと寸胴の一本。たぶん中学生ぐらいのときに、親からもらったもの。

長年手入れをしていなかったので、インキがこびりついている。
丁寧に水洗いして水を切る。
濃紺のインキを吸い上げて、しばらくペン先を滑らせていると、じわーっとにじみ出てくる。はっとした。長いこと忘れていた感覚が指先に芽生えてきた。

当時は日記を書いていた。
日記というより雑記。
まだインターネットはおろか、パソコンすらない時代。
分厚い日記帳なるものに、この万年筆で書いていた。
思いを搾り出すように、ぎゅーっと紙にペン先を押し付けていた。
今も実家のガレージのどこかに残っているはずだけれども、内容はおぼろげにしか覚えていない。

でも、この太目の線、丸くてすべすべする胴、紙との摩擦の度合い。
カラダが何かを思い出してくる。
この感覚が自分の原点なのかも、そんな感じがした。

Ray CharlesのWhat'd I Sayも、カラダに染み込んでいる、カラダが覚えている。
自分だけではなくて、世の数多のポピュラー・ミュージックのカラダに、DNAに刻み込まれているのかもしれない。

何てことはないといえばそうかもしれない。
とんでもないといえばそうかもしれない。

Ray Charlesは、器用で包容力があるのでレパートリーが広い。
どんなスタイルも取り込んで、彼流の暖かいエンタテインメントに仕上げてしまう。
ゴスペル、R&B、ブルース。
当時はさまざまなスタイルが勃興し、融合し、発展していた。
アフロアメリカン・ミュージックの発展へのRay Charlesの貢献がいろいろと言われるものの、今となってはどうでもいい気がする。いや、貢献を否定しているわけではない。ただどんな役割を果たしたかとか、どれだけ偉いかとか、何百万枚売ったとか、説明による評価がしっくりこない。もっと直感的で、感覚的なものだと思う、What'd I Sayって。

万年筆を指で触って、目で眺めることで、生きることへの思いを確かめるように。
What'd I Sayを耳で触って、心で眺めることで、音楽の生命力を確かめる。
これは私たちのひとつの内臓なのだ。

この原稿も、万年筆で書いてみたかった・・


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コメント 4

自分も中学生の時くらいに、万年筆って大人の持ち物!みたいな
憧れがあって、安く手に入れたものを愛用していました。
ITだんなと結婚してからは、鉛筆すら滅多に持つこともなく、
書き物は専らキーボード相手になってしまいました。
白い紙に、大好きな緑がかったブルーブラックのインクの
線が伸びてゆく・・・そんな情景を思い出しました。
Rayの声とそれは、とてもよく合います。
by (2007-08-08 23:34) 

deacon_blue

☆ 大滝さんの『レッツ・オンド・アゲイン』で「音頭」ヴァージョンが聴けます(爆)。
by deacon_blue (2007-08-09 18:13) 

ezsin

ぞうの国のあるじさん、本当に最近筆記用具って触らなくなってしまいましたね。キーボードはキーボードで、独特の指への触感が気持ちよかったりしますが、おっしゃるようにサーッと線を引く爽快感が懐かしい。Rayの声の伸びにその思いを重ねているのかもしれません。
by ezsin (2007-08-09 23:19) 

ezsin

deacon_blueさん、そんなヴァージョンがあるなんて知りませんでした!なんだか想像できないような想像できるような、とても気になります・・
by ezsin (2007-08-09 23:20) 

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