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The Smiths - The Queen Is Dead [Artist S-U]

ライ麦畑でつかまらない。
The Smithsの真骨頂は、誰にも捕まらないことです。
皮肉と批判とスプーン一杯分のシンパシー。
見え見えの強がりを誇示しながら、頑として受け入れられまいとがんばる。

物議をかもす物言い。
挑発的な態度。
誤解を狙った言動。

ロックバンドなんてくそくらえ。自分たちの存在自体も煙に巻くことで、The Smithsはひたすら捕まるまいとすり抜けていく。彼らは何をそんなに恐れていたのだろう。

当時からしてもオーソドックスでシンプルなギターサウンドは、エキセントリックなMorrisseyのキャラとは対照的に、わたしたちに染み込んできた。わたしたちに寄り添ってきた。実はMorrisseyって寂しがり屋なのかもしれない。そんな淡い期待を抱かせるに足りるだけの、最低限の親近感。

手に負えない曲者のMorrissey。抱きしめたくなる音を鳴らすThe Smiths。
いったいどっちが本物なのだ?

このバンドの最大の不幸と、最大の奇跡は、他者との折り合いがまったくつかないスノッブでインテリなはみ出し者が、ロック・バンドという下世話で大衆的な方法論しかとり得なかったという皮肉な事実です。

Morrissey自身が感じていたはずですが、ロックバンド的方法論は自分がいちばん毛嫌いするもの。文学的でなく、知的でなく、美的でもない。にもかかわらず、それがいちばん自分らしいこともわかっていた。古典にも、研究にも、アートにも彼が求める答えは存在しない。きっとこの虫唾が走るロックしかやることはないのだ。巨大な葛藤を内部に抱えながら、それしかとりうるすべを知らない中で悶絶していたのがThe Smithsというバンドだったのだと思います。

The Queen Is Dead。
The Smiths Is Dead。
Morrissey Is Dead。
You Are Dead。

ピリオドを打ってしまってはいけないものに、唐突にピリオドを打ってしまおうとするアルバムです。まずピリオドを打ってしまおう。そこからどうなるかは僕たちは知らないよ。この作品の潔さと、落ち着かなさはそんな精神状態に起因する。

僕たちが死んでしまっても、消えない光がある
(There Is A Light That Never Goes Out)

終わりを宣言しても、完全には命を断ち切らない。
どこかにひとしずくだけは希望と呼べるものがあるのではないか。
The Smithsがロックという手段を選んだのは最後の望みを託すため。
首の皮一枚に、生きている理由があるのではないかと思うため。
さもなくばテロリストになっているか、自殺しているはずなのです。

The Smithsの音の中に、今でもわたしたちが捜し求めているのは、死ぬか生きるかの選択につながる、希望のヒントなのかもしれません。


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deacon_blue

☆ こんにちは。早々とTBつけてしまいましたが,パンクが初期衝動であったとすれば,モリッシーとマーが作りあげたものは,その初期衝動そのものの否定であったのかもしれません。否定することを否定しても肯定にはならない。このメビウスの輪の上で,モリッシーは自らの美意識すら対象化したアイコンに縮小しました。それは皮肉でもなければ安直な受容でもない。諦念を鼻先にぶら下げて疾走する競走馬のようでもある。

☆ TB先の「ようつべ」に貼った当時のライブでモリッシーが持ち歩くプラカード。あれこそロックスター的な商業主義への客体化のパロディでしょう(あれを見てプロレス試合の会場で自分の名前などを掲げる若者を想起しました)。否定して,否定して,グルッと回って,元いた場所にいる自分を見つける。その皮肉をスミスは体現していたのではないかと思います。では(^o^)。
by deacon_blue (2007-08-30 17:47) 

ezsin

deacon_blueさん、TB、コメントありがとうございます。プラカード・パフォーマンスは強烈ですね。ご指摘の「否定の否定」の展開はとても説得力があります。メビウスの輪の上を走り続ける競走馬に終点はないのかもしれません・・
by ezsin (2007-08-30 22:35) 

うまくコメントが書けそうにないので、すみません~
nice!をいっぱい押したいです!!しばらく聴いてなかったので、また週末にでもリピートしてみます。
by (2007-08-31 01:06) 

ezsin

ありそんさん、久しぶりに聴いてみてください。やっぱりいいですよ~
by ezsin (2007-09-01 03:42) 

Tutu

音楽はドラッグだ,しかしその更生施設はない
モリのそんな言葉をおもひだしました。
真夜中のスタジオで,すでにできあがったトラックに,ひとり歌詞をたたきつけて帰ってくモリ。翌朝マーがドギモをぬかれたのは有名な話
あくまでもパーソナルな表現の足し算が生み出すマジックだったのが
The Smithsの奇跡だったように思います。デレクのPVもしかり

Life Is Very Long,When You're Lonely......
by Tutu (2007-09-04 00:39) 

ezsin

パーソナルな表現の中にこそ、普遍的でユニバーサルな真実が宿っていたのでしょうね。それを一人で抱えざる得なかったところにMorrisseyの孤独があり、栄光があったのだと思います。
by ezsin (2007-09-04 23:42) 

鯉三

The Smithsはパンク・ムーブメントの音楽にはなかった何かを感じて聴き始めました。バンドにはポリスのメンバーのような音楽的な才能はなかったし、デビューの時間がちょった違った。だからこそ、リアルタイムで感じたい何かがあったバンドでした。つまるところ、思い出のバンドです。
by 鯉三 (2007-09-11 01:10) 

ezsin

その感じよくわかります。「何か違う」というものに引き寄せられるようにして聞いていた。最初はよくわからなかったのですが、「いま、それが起きているのだ」という同時代感はすごくありましたね。本当のパンクは追体験だったので、なおさら「自分たちのバンド」という思いがありました。U2やスプリングスティーンにも同じような共感があったのですが、もっと直接的でわかりやすかった。

Smithsは、「世の中そんな簡単なものではない」と、もっと醒めた視点で現実に目を向けさせようとしていたのかもしれません。「簡単ではない」と言っているわけですから、簡単にわかってしまってはいけない、という宿命的な矛盾を抱えていたのがこのバンドの良くも悪くも魅力だったのかも。
by ezsin (2007-09-11 20:43) 

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