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Marc Cohn - Join The Parade [Artist A-C]

仕事仲間でもある友人に、地下鉄サリン事件に遭遇した人がいます。
しかも目の前でビニール袋が割れるのを見、警察の証人リストの上位にランキング(?名誉なことじゃないですが・・)されていた人です。

普通にしていますが、生死の感覚が自分とはまったく違います。
意識を失い、病院のベッドで目覚めてから、死ぬことだとか、生きることだとかは、まるで意味のある概念ではなくなったのだそうです。その日の出来事を淡々と説明するあたりは空恐ろしいものがあります。

だから仕事はできます。
文字通り怖いものはないので、どこへでも行き、誰とでも渡り合い、どんな付き合いにも動じません。今は中国事業の立ち上げに従事していますが、中央政府に近い筋の巨大なヤバイ会社に一人で乗り込んで行っています。いつ消息が途切れるか気が気ではありませんが(それにそんなにヤバイ仕事はしたくありません・・)、ちゃんと理性は持っています。

喜怒哀楽もあるのですが、どこか違う。
豪快に笑っても、カチンと来て怒鳴っても、目の表情が変わらない。空を見つめたような、死んだ魚のような、グレーのままなのです。「恐怖」をアク抜きした感情とは、こういうものなのか・・

さて、Marc Cohn
じっくりと細部まで鑑賞したくなる作品です。
表面のメロディやサウンドだけではなく、ボーカルとコーラスの間にある空間とか、ドラムの湿り気の具合だとか、ピアノが入るタイミングだとか、ストリングスが心に描き出す雲の形だとか。じっとりとした声からして、幾重にも何かが積み重なっていることを感じさせます。

アメリカの大らかさと自由を感じさせながら、反対側に生じる影の存在をしっかり見つめる。両者の軋轢が人を向上もさせ、堕落もさせる。何気ない音の細部に見ることができるのは、そこまでの視野の広さが作り出す深みです。

Marc Cohnは2005年に強盗にあって、銃で頭を打ちぬかれたそうです。

リハビリ中にハリケーン・カトリーナの惨状を目の当たりにして、一気に創作のインスピレーションが天から降りてきたのだそうです。

だからというわけではありませんが、もうどんなことにも揺らがない音ではあります。
ただ、堂々と岩のように君臨しているわけでも、押し付けがましい感傷を振りまいているわけでもない。不思議なほど淡々としている。

そう、グレーの喜怒哀楽。

Marc Cohnは、感情を超えた理性で私たちに語りかけることのできる、最後に頼るべきアーティストなのかもしれません。


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