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Efterklang - Parades [Artist D-F]

人は誰もが毎日舞台に立っている。
自分が主演の小さな劇。
何も新国立劇場や歌舞伎座だけが桧舞台ではない。
深呼吸をして、カーテンの裏からスポットライトの当たる表へと出て行く。
喜怒哀楽
一喜一憂
無味乾燥
七転八倒
運命の書いたシナリオに沿って主人公は動く。
役者は意志を持たない。
ひたむきに何かを演じている。

最近婚約したSさんは、輪の中に入れずに一人ぽつんと浮いてしまう人が好きなんだ、と教えてくれました。沈黙が気にならない人。普通に変な人。だから今まで長続きしなかったんですよ、とカラカラ笑いながら話してくれました。

日本人には、縄文型の人と、弥生型の人がいるんですよ、と教えてくれたGさん。青森あたりには、ロシアから渡ってきた人の特徴が見られるのだそうです。感心して聞いていると、「ただ知りたいって興味があるだけなんです」、とはにかんでいました。学者のお父さんは厳しくて、テレビはほとんど見せてもらえなかった。今でもバラエティ番組を見ると心が痛むんです、と小さな声で打ち明けてくれました。

こじんまりしたレストランで話を聞きながら、小さな劇を見ているようだと思いました。

「小さいころね、裏口から庭に向けて放り投げられたことがあるんだ、父親に。コンクリの地面に顔から落ちて、ほほに大きな擦り傷ができたんだ。次の日に学校で、何て説明するか困ってね。お風呂場で転んじゃってさ、ってふうに言った。そんな傷なんてできっこないんだけどさ。投げ飛ばされたときの痛さやら、血相変えた母親が抱きかかえてくれたこととかを覚えているんだけど、一番鮮明に覚えているのは、母親に連れられて子供部屋に引き上げていくときに、チラッと見えた父親の姿。ぐったり椅子に座り込んで、ダイニングテーブルに肘をついて頭を抱えこんでいたんだよね。」

Efterklangはデンマークの9人編成のバンド。
クラシックなオーケストレーションと、マーチング・バンドの高揚感。
混声コーラスのフォーマリティと、ネオプログレの前衛性。
ピアノの叙情性と、ポップの大衆性。
どんな情景もここから湧き上がる。
まさに小劇場の舞台音楽です。

小さな涙と、ささいな元気と、かすかな絶望。
ミニチュアサイズだけれども、かけがえのない豊かさ。

子供が顔に負った傷と、父親が心に負った傷。
どちらもこの情感の海原の中に漂っている。
どちらも運命のシナリオに翻弄された悲しい役者です。
Efterklangは、淡々とそんなストーリーを紡いでいく。

ささやかな「告白飲み会」が終わった帰り道。
夜中近くに、「バイバイ(お疲れ様)がいえなかった・・」
とメールしてくるAさん。

わたしたちはみんな、演じるしかない小さな役者なのです。


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