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Nurse With Wound - Thunder Perfect Mind [Artist M-O]

ソウル発成田空港行き。
空席ひとつ挟んで隣に座っている男の人が変だった。

滑走路でこれから離陸というときに、
突然席を立って、
後ろのほうに歩いていってしまった。
「え?こんなタイミングにトイレ?
これじゃ出発遅れちゃうよ~」
と思っていると、
案の定、飛行機はなかなか走り出さない。
ところが何分たっても戻る気配がない。
そのうちとうとう飛行機は走り出して、
離陸してしまった(おいおい)。

どこに行っていたのか、
安定飛行に入った頃に戻ってきた。

次に入国カードが配られた。
韓国籍らしいその人は、
片手にパスポートを持って、
じっと30分くらい、
そのカードを見つめていた。
キャビンアテンダントからもらった
ボールペンで、
ときどき何かを書き込んでいる。

機内食が配られてきても、
トレイには目もくれず、
じっとカードを見つめている。

怪訝そうなキャビンアテンダントが声をかけると、
ふと我に返ったように目を上げて、
トレイに目をやった。
カードを空いている側の席に置くと、
それから15分くらい、
こんどはずっとトレイを見つめていた。

さすがにこの頃から、
怖くなってきた。

みんなの食事が片付けられ、
機内の電気が消えて暗くなると、
それが合図のように、
チキンとライスのごはんを食べだした。

最近は機内食のナイフもフォークも、
ステンレスに戻っている。
おまけにその男の人は、
ものすごい勢いで、
バドワイザーを飲んでいる。

刺されたら、どうしよう・・

突然、その人がこっちを向いて
話しかけてきた。
「... pen please?...」
え?ペン?
さっきもらったペンどうしたの?
一瞬、ピクンと緊張が走ったものの、
すぐさま胸ポケットの小さなペンを取り出して、
渡してあげた。

再び入国カードを手にして、
じっと見つめだした。

機内には、もうすぐ着陸の案内が流れた。

キャビンアテンダントがやってきて、
さっさとトレイを片付けていった。
そんなことの一切が存在しないかのように、
その人はまだカードを眺めていた。

恐怖心は消えて、
同情のような、
哀れみのような、
悲しくて、
さびしくて、
でもどこかにぬくもりのある、
へんなもやもやが心に広がった。

そうだよね。
なにも急ぐことはない。
何も考えることはない。
何も気にすることはない。

ぼくもあなたと同じように、
壊れているし、
狂っているし、
見えていない。

おかしいも、
おかしくないも、
誰も決められない。
決めないと世の中回らないと、
思っている人たちが、
決めている。
でもそんな人たちも、
みんな壊れている。

Nurse With Wound
Thunder Perfect Mind
Cold(冷たい)
Colder Still(まだ冷たい)

積みあがる死体。
散らばる脳みその破片。
ポリスチレンのまくら・・

みんなが飛行機を降りていく中、
その人は、じっと立ちつくしたままだった。
だんだん列が進んでいくにつれて、
その人の姿は見えなくなった。

ぼくは決められたルールに従って、
大衆の川の流れに身を任せて、
歩いていくだけ。

降りて、どこに行くの?

降りても、
降りなくても、
一緒でしょ?


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