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Low - The Invisible Way [Artist J-L]

いま住んでいるアメリカの地域では、今年は17年ゼミの大発生があるらしい。
遭遇しても危険はないらしいが、出現予報を出して人々に知らせている。
なぜ17年や13年という変な周期で大発生するのかは諸説あって、
もっとも有力なのは、天敵に勝る集団大量発生の周期を、
他の周期をもつセミともっとも遭遇する回数が少なかった種が生き残った、というもの。
赤い目をしたこれら周期ゼミは、黒い目をしたセミを見慣れた日本人からすると、
宇宙から来たぐらい不思議な生き物に映る。

Lowは周期ゼミみたいなバンドだ。
20年の長い活動期間もそうだが、
他のバンド(音楽)との相関図を書いたとしたら、
近隣のバンドとの距離がとても遠い、
まさに同期する音を探すのが難しい、
不思議なところに位置する。

本作は、
おしっこを入れたプラスチックカップを、
千年後の人が掘り起こしたら、
きっと王様が泣きながら掲げたものに違いないと思うはずだ、
という、まさに17年ゼミ的としかいいようのない視点を持った曲で幕を開ける。

恐ろしいまでのスローテンポ。
ここまでくるとスタイルというより、
この中にしか表現しえない世界の存在を確信しているかのよう。
実際彼らの音が流れている間、
背景がなくなってしまう錯覚を覚える。
静かな「無」の中から音の輪郭や、
言葉やイメージが強烈に浮かび上がってくるのだ。

この感覚は、普通に音楽を聴くときと違う。

Holy Ghostが流れると、その音には、聖霊よりも
もっと得体のしれない「霊的存在」が宿っている気がする。

On My Ownでゆっくりと鳴らされる轟音は、
どんな激しいビートよりも、体の芯を揺さぶる。

土の中から幾多の命が生まれ
母も娘も土に帰っていく、
というMother。

彼らはほんとうに土の中に住んでいるのではないかと思ってしまう。

セミが土から出てきて1週間しか生きない、ということに
私たちははかなさや、哀れさを重ねる。
ずっと暗い土の中で育ち、たった1週間しか自由を謳歌できないと。

でもちょっと違う気がする。

セミにとっては土の中こそ居心地のいい住処だ。
17年間、彼らはゆっくりと自分たちの人生を、
安全に、そしてぬくぬくと生きる。
地上に出てくるのは、死ぬためだ。
多くの天敵が待ち構える中、
最後の仕事としての後世への命をつなぐ作業を、
刻一刻と迫るタイムリミットの中で必死にこなす。

彼らの赤い目に「地上の世界」は、
どれほど恐怖と過酷と絶望に映っていることだろう。

私たちの目に映る地上も、
果たしてどれほどの「楽園」なのだろう。

Lowは17年ゼミとなって、改めて私たちに問いかけているのかもしれない。

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