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Snowbird - Moon [Artist S-U]

オリジナルの作品と同時に、RxGibbsとの共同名義による全曲リミックスが発表されている。繊細なメロディが物語のように流れていくオリジナルとは対照的に、リミックスではメロディはばらばらに分解され、音や声の断片が呪術的なビートの上でループ状に再構成されている。

通常であれば、もと曲をしっかりと聞かせ、ある程度定着させてから「趣向替え」としてリミックスを出すところなのだろうけど、Snowbirdはそうしなかった。今と未来の時間軸を越えたところに彼らの音の意味するところがあるのだろう。

それがオリジナルであれリミックスであれ、音の感触は変わらない。

甘美な響きと、妖精が舞うかのような歌声が幾重にも折り重なり、聞き手を徐々に非日常に引きずり込んでいく。彼らの音楽は、やわらかな装いの中にも、荘厳でどこかヒヤッとする冷たさを帯びている。ちょうどヨーロッパの古い教会の中や、今はなき王朝の宮殿の中にいるときに抱く畏怖の念に通じる。

いまここにいるという現実感は、過ぎ去った膨大な時間、その中に封印されたさまざまな思いが「歴史」という圧縮されたパッケージとしてずしりと存在しているからこそ感じるもの。その対比を目の前にして私たちは己の身の程を知り、何かに対して感謝し、また畏れを感じる。

Snowbirdの音は、そんな時間の重みと瞬間の輝きの両方を内包している。
Cocteau Twins時代から綿々と続く幻想的な音作りや、オリジナルとリミックスを並存させる仕掛けも、私たちに「今鳴っている音は何か」を改めて問いかけてくる。もちろん、音楽も時間軸の上を流れていく歴史の一部であることから逃れることはできない。それを承知の上で彼らは、メロディやリズムという「流れていくもの」より、もっと深いところで変わらずに存在し続ける、「音の原質」のようなものを、畏敬の念を込めて追求しているのだろう。


-------Remixed---------


今年は寒くて、ずっと氷点下の日が続いた。
車のバンパーからはツララがたれて、雪上がりの朝にはダイヤモンドダストが現れた。
正確には、ただ細かい雪が舞っているのか、本当に空気中の水分が凍っているのか、素人目にはわからなかったが、恐ろしくなるほどの寒さと、キラキラ輝く美しさとのあまりのギャップにしばし呆然とした。

メンバーのStephanie Doseは、森や動物に囲まれた自然への強い思いが、本作の動機と語っているが、美しさの裏に常に潜む厳しさをわきまえているのだろう。牧歌的な印象はほとんど与えず、むしろ凛とした緊張感を全編に漂わせている。

Massive Attack、Chemical BrothersそしてSimon Raymonde(Cocteau Twins)。彼女とコラボしてきた人たちを思うと、厳しさ、暗さ、怖さといった彼らの創作の原動力の向かう先に、どうしても彼女のきらめきが必要だったのだろうと思う。

厳しさがなければ生まれることのない輝き。
厳しさを感じることでしか認識できない美。

意識が遠のくほどの寒さに身をおくことではじめて、
水の結晶がダイヤモンドに変わる瞬間を体験できるのだ。
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