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Bombay Bicycle Club - So Long, See You Tomorrow [Artist A-C]

音楽業界が厳しいといわれて久しい。
市場の大半を占める物理メディア(CD)の売上がここ数年で急激に減少、デジタル配信が取って代わるも、CD最盛期には遠く及ばない。ライブやイベントなどの収入も、増えてはいるものの全体に占める割合は10%前後のようだ。

アーティストにとっても、デジタル機器、インターネットの発展と普及で制作、発信、配信のコストが大幅に下がり、今までとは違う競争環境の中で活動を再定義していく必要に迫られている。

もっともレコード会社やラジオ局が牛耳る供給の仕組みと、そこをうまく利用して活動してきたアーティストとの関係だけで成り立つ業界の構造は、考えようによっては長く続きすぎたとも言える。

誰だって歌いたい歌を歌いたいし(著作権というものを気にせず)、聞きたい音楽を聞く方法はいくらでもあるし(ラジオ以外にも)、金銭的に換算される音楽の価値が一律同じ値段である必要もない(どんな曲でも150円?)。大衆音楽が抱えている、漠然としているけれどもいったん火がつくと何でもひっくり返してしまうエネルギーに、ようやく火がついたということなのかもしれない。変革は必然なのだ。

一方で、やっかいなのは業界の仕組みだけが問題ではないところだ。
エンタテインメントの多様化とそれらへのアクセスの容易さが飛躍的に向上し、音楽は他の選択肢との間で熾烈な競争にさらされるようになった。

個人的にも、ここ数年落ち着いて音楽を聞く時間がなかったのだが、今、片道1時間の車通勤をするようになって、ようやくアルバム一枚を聞けるようになった。そう、運転中はゲームも、メールも、メッセージも、動画も見ることができない。唯一音楽だけが選択できる環境なのだ。逆にそういう有利な環境でもない限り、なかなか音楽を選択してもらえなくなってきていると言える。

いま音楽が直面する一番の課題は、「スマホの10分」なのだと思う。
すべての人の手に行き渡りそうなスマートフォン。ほとんど24時間そばにい続ける存在になりつつあるデジタルデバイス。すべてが選択可能な、行動のメインハブになりつつある。

今日は何をしようか、何をしたら面白いだろうか、といった行動判断の起点だけでなく、朝の歯磨きのついで、通勤ホームの電車を待つ間、退屈な授業や打ち合わせの最中など、ちょっと空いた時間の穴埋めの際にも、つねにそこにいて選択を促してくる。すべてへタップひとつでいざなってくれる 。It's just a tap awayなのだ。

そのときに音楽を選択してもらえるか、あの曲を聞こう、あの音楽が聞きたい、と思ってもらえるか。そうでなければ、私たちはすぐにLINEに行ってしまい、YouTubeを見てしまい、ツイートし、配信された漫画を読んでしまうのだから。

では選択の決め手となるのは何だろうか。
キーワードでいえばStickiness。粘着性、捉えて離さない、という意味。
優れた漫画やゲームが持つ、いったんやり出すとやめられなくなるあの性質。やむなく中断しても、ちょっとでも時間が空くと続きをやらなくてはいられなくなる状態。次々関連動画を見てしまうのも、いったん始まるとスルーできなくなるメッセージも、スレッドをひたすら読み続けてしまうのも、すべてそこにStickinessが備わっているからだ。

このことに気づいている音楽アーティストはどれだけいるのだろう。
もっと多くの人に聞いてもらいたい、
もっとCDをデジタル配信を売りたい、
もっとライブに人が来てほしい。
そのことを実現するには、まずスマホの10分を勝ち取らないといけないのだ。
そしてスマホの10分を勝ち取るためには、Stickinessがなければ話にならないのだ。

とてもとても長い長い前置きになってしまったが、Bombay Bicycle ClubはStickyだ。いったん聞き出すとやめられない。空いた時間ができると、1曲聞きたい。もうちょっと時間があるともう1曲聞きたくなる。彼らの楽曲へのこだわり、メロディ、アレンジ、世界観のすべてがStickinessの獲得に費やされているかのようだ。それくらいの執拗さをもって一曲一曲の完成度を追求している。これをポップとかロックとか安易にカテゴライズするのは気が引ける。バンドというユニットから発することのできる、人の興味を引きずり込んで乗っ取ってしまうことのできる究極の「憑依サウンド」を、彼らは目指しているのだ。

これは皮肉でもなんでもないが、音楽のStickinessの獲得のためにもっとも大切なことは、ひたすら楽曲に没頭して、すばらしい音楽を作ることだ。アーティストとしては、これからは配信だ、ライブだ、ブランド管理だと環境変化の中でいろいろ考えなくてはいけないことがあるのだろうし、事実それは避けて通れないことでもある。しかしそんな中にあっても、一番シンプルな原点がいまだにもっとも大事なことなのだといえることは、とても幸せなことだと思う。
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