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Girlpool - Powerplant [Artist G-I]

「絆」という言葉の周辺に漂う押し付けがましさ。
大量生産され、大量消費される中で、知らず知らずのうちに形成されたコミュニケーションに対する過剰評価と、そのことを否定することができにくい排他的な雰囲気。
マイノリティがどれだけ注目されようと、それがあくまで「マジョリティ」側から見た相対化の枠組みの中で語られる限りは、いつまでたっても、その人の居心地の悪さは変わらない。「マイノリティ」とは、規定され、区別される特定の集団ではなくて、私たち一人ひとりのことに他ならないのに。ふと自分に立ち返るとき、まわりのだれもが同じように立ち返る「殻」をもつ、孤独な存在にしかすぎないと気づくこと。
そこが出発点のはずなのに。

おそらくそんなミニマルでパーソナルな個と個の関係を基点としてGirlpoolは始まったのだろう。二人の関係とて、ベタベタした表層的なものではなく、傷つけあい、わかり得なさに直面しつつも、ぶつかりあう「個」の生々しさの感覚を求めて共にいるような。

そんな緊張感とも親密感ともいえない微妙な関係から生み出されるものが音楽だった。
ぶつかり合いの持って行き先として音楽しかなかったのだろう。

抑制の効いたささやくようなハーモニーは、二人の距離感として必然で、時にきりきりと歪みだすシンプルなギターサウンドは、周りが押し付けようとしてくる規格化や画一化された関係性に対抗する精一杯の自己宣言なのだ。

かような意味でのマイノリティのあり方を考えるとき、物理的にも、社会的にも、肉体的にも、すなわち実態的なものとして存在しない音楽に収斂していくことは、とても示唆に富むことではないだろうか。

「そこにいて。そのたいくつなどこかで、きってみつける」
と歌うStatic Somewhere。
間違いなくこの音の中にわたしたちはいる。
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Karl Hyde - Edgeland [Artist G-I]

全体的にやわらかい音とやさしいメロディによる楽曲群だが、それらを貫く作品のテーマは決して軽いものではない。他の種類の音楽(特に大衆性をもったもの)との明快な違いは、ここに漂う独特の静けさだ。

ポップミュージックがもたらす高揚感は、送り手と聞き手との間に発生することがあらかじめ想定されていて、その「場」ともども音楽に内包されている。音楽が流れた瞬間に、送り手のイメージを浮かび上がらせ、その音楽に酔い、感動するたくさんの他の聞き手との間の巨大なつながりの存在を想起させ、それらもろとも含めて幸福な音楽体験を提供する。
「ああ、なんてよい音楽なんだ」
と感動するだけでなく、
「なんてこのアーティストはかっこいいんだ」
「こういう音楽のよい理解者の一人でよかった」
といった付随的な感情もすべてポップミュージックのパッケージの中には、含まれている。

対して、Edgelandは、形としての音やメロディはポップミュージックを倣っていたとしても、聞き手が受け取る印象はむしろ寒々しい。創作の起点になったところでもあるとのことだが、どこかに取り残された印象を受ける(Edgelandとはロンドン郊外のエリアのあたりのことを指しているらしい)。

Edgelandをひとことで表現するなら「周りに誰もいない感じ」だ。
これはEdgelandに限ったことではないが、創造的で優れた芸術的表現は、えてして「周りに誰もいない感じ」を与える。
それは単に創作者が「孤高の人」であるといったことではなく、また、難解さや非日常さが人を寄せ付けない感じを与えているのでもなく、もっと本質的な理由からだ。その表現に向かう表現者の動機と、その表現を求める鑑賞者の動機の根本に、それははじめから存在しているのだ。

廃墟を衰退や退廃の象徴として捉えているわけではなく、また廃材や荒涼とした景色をオブジェ的・テキスチャア的に表現の材料として捉えているわけでもない。もっとシンプルに、普段見落としがちな私たちの生活の一面、気づいていない日常の一面として捉えている。音がやさしいわりに、過度にセンチメンタルになっていないところにそれは現れている。

Karlにとって、ロンドン郊外の何もない、忘れられかけているEdgelandは、「普通に生活している自分」をむしろリアルに浮かび上がらせる背景のような役割を持っているのだろう。

Underworldの電子音が、現代社会の中で生きていくための装備や、生きていく有様を体現するものであるとするならば、Edgelandは、そのよろいの中にいる生身の人間の、「そのままの姿」の音なのだと思う。むき出しの姿を体現するために、電子音の対極にあるもとしてKarlの「声」がフォーカスされ、楽曲はすべてKarlの声を中心に構築されている。音も過度に武装しないよう、ひとつひとつが丁寧に選ばれ、節度を持って奏でられている。

Karlの声を通して伝わってくる、私たちの生身の日常。その周りには誰もいない、という認識が、当たり前のことのように染み込んでくる。この音からは他者との交わりを介した熱狂も、託すことのできるビッグドリームも湧き上がってこない。
ただそこに悲しさや悲壮感はなく、むしろある種の心の安定がある。「周りに誰もいない感じ」は敗北や忌避すべきものではなく、あまたの欲望や理想の果てにある、たどり着くべき到達点なのだろう。

優れた表現がなぜ孤独を伴うのか、なぜ優れた表現者とそれを求める鑑賞者がその点で繋がるのか、究極の逆説的運命だと思うが、誰も繋がることができない、わたしの周りには誰もいない、という認識が唯一、あなたとわたしとの間で「共有」できることだからだ。
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Incognito - Tales From The Beach [Artist G-I]

職人芸を駆使した上質な調度品を愛でている気分にさせてくれる。プロが作るプロとしての誇りと、有無を言わせぬ説得力をもつサウンド。ファンクにしろ、ソウルにしろ、ジャズにしても突っ込む余地がなく、ただひたすらにクールな美学を完璧に演奏している。ある意味では人は近づけない。外界と途絶したショーケースの中で完結する箱庭サウンド。本当にかっこいい音は、さわらせない、真似されない、でもさわりたいと無性に思い起こさせるサウンド。Incognitoにはそんな手の届かないところにすぽっとはまっている実に幸福なバンドです。
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John Hiatt - Same Old Man [Artist G-I]

もう書くのやめようかなあ
と思っていたときに
John Hiattを聞いた

うーーーーん
続けよう(笑)

変わっていく音楽
時代を象徴する音楽
人を動かしていく音楽
忘れられ消えていく音楽

音楽の大海原に飲み込まれ
アップアップの状態で
言葉も思考も
身体から抜けていくような
気がしていたときに
ただじっと静かに
Same Old Manを聞いた

そうか

そのためにこの音楽があるんだ

トラッドだ
フォークだ
いぶし銀だ
といった表現は
ぜんぜん意味を成さない

激しく上下する波の大洋で
何をジタバタしてるんだ
ぜんぶただの水じゃないの
H2Oだよ
塩が入っているかどうかなんて
関係ないよ
ぼくたちはもともと
海から生まれたんだよ

Hurt My Baby
誰かがぼくの彼女を傷つけたんだ

静かに流れていく旋律とJohnの声を通して
歌われなくてもじんわりと伝わってくる

「それはぼくなんだ」

そう
その気づき
その視点
そこにある安心感と
普遍性

なんで忘れてしまうんだろう

ぼくたちは放蕩息子

またおんなじことを繰り返し、
John Hiattに戻ってきて、
懐かしさの腕の中で
涙するんだよね。

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Gemma Hayes - The Hollow Of Morning [Artist G-I]

夢から醒めたくない
どこからが夢で
どこからが夢じゃないのか
意識できるものはすべて
夢の中に押し込めてしまいたい
その夢が蒸発して
消えてしまうのなら
何の後悔もない

Gemma Hayesの本作を聞いたとき、
ここが夢の中心なのだと思った。
彼女のかすれた声は、
半分、蒸発しかかっている。
砂がこすれあうような微妙なサウンドは、
半分、消えかかっている。

それがただ
My Bloody ValentineやMazzy Starを
彷彿とさせるからではなくて

たとえMBVが17年ぶりのライブを行うからといって
夢が醒めるわけではない

こと




ここにずっといたい
この音の中に埋もれてしまいたい
この音の余韻の中に
消えてしまいたい
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I Am Kloot - Play Moolah Rouge [Artist G-I]

ブルージーな中にも、コンテンポラリーなスピード感とエッジ感をもった、刺激的なサウンド。重いトーンの音色を、底から吹き上げるエネルギーの蒸気で軽く聞かてしまう。泣かせの味も、いにしえのJohn LennonやNeil Youngをうかがわせてグッとくる。ロック的表現の進化と深化を味わえる好盤。
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John Lee Hooker - Don't Look Back [Artist G-I]

ブルースマンは頑固。
本当に融通が効かない。
かたくなにスタイルにこだわり続け、
ばかの一つ覚えのように、
それだけをやり続ける。

ジャズとか、
ソウルとか、
ロックとか、
気を利かせていろいろなことをやる人もいるけれども、本当の頑固者はそんなことはしない。そもそもジャズもロックも根っこは同じ。
「所詮ブルースじゃないか」
それが、彼らの言い分。

あまりに凝り固まっていて、
逆に言えば、他のことができない。
ギターのコードやフレーズを弾こうとしても、
きっと手が動かない。
もう、
芯まで染まってしまっている。

John Lee Hookerも
死ぬまで同じ。
何をやっても同じ。

97年の本作には、
Van Morrisonが全面参加。
敬愛を示し、
ソウルフルで力強いグルーヴを持ち込んでいるけれども、
そんなことはお構いなし。
というより、
やはり、
変えられない。

ドロンドロンで、
真っ黒で、
うごめく得体の知れない生き物。

John Lee Hookerに取り付いた不気味な音の生き物は、いつものように徘徊する。

それでも表現の中に豊かさがあるのは目を見張る。
しなやかで、
エロチックで、
センチメンタルで、
暴発的。

黒は黒でも、
グロスからマットまで、
漆黒から、
うっすらとピンクを帯びたものまで。
表情は多彩。

これだけの味わいを、
単純極まりない中から生み出すのは、
やはりただ事ではない。

一生涯、打ち込んで、
それでも会得できるかどうか。

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Don Henley - End Of The Innocence [Artist G-I]

終わりの先に待つものを常に想起させる人です。
Eaglesでカリフォルニアン・ドリームの終焉を憂い、
Long Runの果てに自分たち自身の終焉を重ね、
セピア色のスタイリッシュなスチルの中に夏の日々(Boys Of Summer)を封じ込め、哀悼の意をこめてイノセンスの時代を見送る。

彼の中にはいつも「何かが終わり、何かが失われる」モチーフがある。湿ったハスキーボイスがかもし出す雰囲気でもあるけれども、それ以上に彼自身が抱える宿命的なものと映る。

終わりの先にあるもの。

終わりを文字通り終わりと考え、その瞬間までのプロセスを必死に大切にする考え方と、あらかじめ終わりを受け入れて、その先まで見通して人生の意味を考える。Don Henleyの音楽に漂う哀愁の中の明るさは、終わりを通過点と見るが故の複雑な心の動きからきているものです。

卒業式が終わって見慣れた黒板をもう一度見つめるとき、
飛び立つ飛行機の窓から、憧れの地をもう一度眺めるとき、
閉まる電車の窓越しに小さく手を振る恋人に微笑みで返すとき。

その瞬間が二度と訪れないことは誰もが知っている。
過去が何にもまして貴重に輝く瞬間、
わたしたちのこころに暗闇が立ちこめる。

それでも明日は明日としてやってくる。
どれだけ過去が輝いても、
明日があることのほうが大切なこと。

Don Henleyの音楽が鳴らすのは、そんな明日の景色。
明るくもなければ、暗くもない。
少しばかりの不安と、これから埋められる可能性の空白。

イノセンスの先に待つもの。
そこは希望か絶望か。
だれも知らない。

わかっているのは、
この音楽を聞いていれば、
迎え入れることができるということ。
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Guillemots - Red [Artist G-I]

桜が満開で、
天気がよくて、
風が思いっきり強くて、
暖かいんだけど寒くて、
新年度の空気が街のあちこちに確認できて、
「もう一歩前へ」
と気持ちが前向きになる。

どこかから、
エネルギーがほしい。
進もうとする気持ちを支える、
体力や推進力がほしい。

Guillemotsには、
湧き上がる元気がある。
カラカラ回る蒸気機関車のようなエネルギーではなくて、
まるで手品のように、
サッとかざした手の中から、
からっぽの帽子の中から、
ハッとする驚きとともに、
鮮やかにポジティブな音を出してくれる。

種は明かしてくれない。
いろんなネタが仕込まれていることはわかるんだけど、
本当の肝心の秘訣は明かさない。
ストレートに吹き出るポップセンスは、
それだけでもいけるのですが、
エスニックだったり、
エレクトロニカだったり、
ちょっとちょっとひねりを加えることで、
何倍にもスパイスが効いて、
ピリリと印象に残る。

まだまだポップ・ロックの世界に、
種明かしをしてほしくなる、
秘密を明かしてほしくなる音があるなんて。
それだけで春のひと時を楽しめる、
実に旬の音。
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Galactic Dice - Alleatoric Grooves [Artist G-I]

ギリシャで結成された2人組ユニット
淡々としたリズムの中に様々な音を混ぜ込みながら、複雑なタペストリーを織り成す様子は、ジャズの手法のユニークな水平展開と捉えることができます。
Herbie HancockやAphex Twinを影響に挙げることに納得がいきます。

こういう進化のあり方は確かに有りです。
インプロそのものの発展形は、まじめすぎる。
雰囲気重視のニューエイジは、つまらな過ぎる。
適度な複雑さと、全体の構成の安定を維持することは、
ジャズ的マインドで臨むことで、かなり上手にこなせる。

Galactic Diceの音さばきに酔うのは、
このあたりのバランス感覚がちょうどよいからです。

地中海を眺めていると、こんな感覚になるのでしょうか。
彼ら出身のThessalonikiは、ギリシア第二の都市。
きれいな港町のようですね。

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