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Wye Oak - The Louder I Call, The Faster It Runs [Artist V-Z]

これほど同時代のカテゴリやピアー(同胞)の影響からきれいに距離を取った独自のサウンドはなかなか聞けるものではない。しかも近寄りがたい壁で隔たれた「わかる人にしかわからなくていい」的な偏屈さで成立しているのではなく、全てを受け入れて賛美するかオープンさで、真正面から高らかに鳴っている。

明らかに新しく、感じたことのない興奮にもかかわらず、それをロックだ、ポップだ、エレクトロニクスだ、ギターだと分析し、比較し、解き明かそうといった突っ込みをすべて無効化し、ひたすらに音楽だけに向かわせる吸引力と魔力を持つ。

言った手前、これ以上「評論」することはなくなるわけだけれども、こんなに幸せで前向きに「これが今だ!」と感じさせてくれる音楽があることを、黙ってすごせるわけがないわけで。

こればかりをエンドラスに聞き続け、回りにあるほかの音がどんどんかき消されていく。

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Yo La Tengo - There's A Riot Going On [Artist V-Z]

ソフトフォーカスがかったアブストラクトでドリーミーな音響空間をロックの文脈上に構築。
自分たちらしさを保ちつつ、はっとする新しさを持ち込み続けることのできる彼らの才覚は稀有のもの。
気持ちよさを通り越し、神々しさすら感じさせる本作の美しさは、何層にも渡る複雑な心象感覚を創発させる。
それはちょうど「RIOT」と題されたタイトルが、単純な社会事件をあらわす言葉としてだけではなく、ごく近しい身の回り、そして自分自身の心の中にもある、心の揺れ動きや歪みにもつながることに気づかされるような。
そしてそのことを客観的に対象化しつつも、自分の一部として認め受け入れ、進み続ける(GOING ON)ことまでをも内包する、深く優しい音楽であるのだ。
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Wye Oak - Tween [Artist V-Z]

エレクトロポップとディストーションギターの融合。
定型によらない自分たちの価値観に基づくアレンジとメロディ。
それでも全編にみなぎるぱちぱちと炭酸がはじけるような活きのよさ。
唯一無二でも孤立感がない。

マイノリティが、マジョリティの論理の中で肯定されていく今の時代。
進んでいるようで、どこかしっくりこない居心地の悪さ。
「変な自分」の「変な」が、自分の方からも、みんなの方からも消えてなくなるところ。

そんなところにWye Oakはいる。
そんなことをTweenの音は成し遂げている。

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Kurt Vile – Wakin On A Pretty Daze [Artist V-Z]

休日はだらだらと過ごすことが多い。
何時間でもただソファの上でゴロゴロしていられる。
トイレに行くのも、ご飯を食べるのも面倒くさくなったりする。
なんてもったいない、と責める自分がいないかと言えばうそになる。
心のどこかにはそんな声がある。
それでも、そんな後ろめたさをもどっかに追いやるかのように、
これでいいじゃないか、というもう一人の自分がぼそぼそとつぶやく。

Kurt Vileの本作を聞いていると、
後者の自分が勝ち誇ったように高笑いをする。
ほら、これでいいんだよ。

長々と続く曲が多い。
それもドラマチックに展開があったり、
ストーリーテリングの必然性からそうなっているのではなく、
ただなんとなく、
まあ、言い切ってしまえば、
だらだらと続くように長い。
終わるかと思えばそこから続き、
変わるかと思えば変わらずにずっと続く。

ところが、これがとても新鮮なのだ。

古くはLP、しばらく前まではCD。
アーティストの作品は、メディアの物理的な制約のせいで、
ずっと「時間枠」の中で捉えられてきた。
40分、あるいは76分。
その中に、どのように曲を収めるか、
聞き手は、その時間をどのように聞くか。

ダウンロードという仕組みが主流になり、
この制約は事実上なくなった。
やろうと思えば、
20分の曲を10個にして一つの作品にしてもいいし、
1分の曲を1つだけ発表してもよい。

アーティストと聞き手の間で、作品(アルバムという集合体でも曲単位でもいいが)が
取り交わされる際に、「時間」という概念が解放されている。
両者間でいかように設定してもいいのだ。

Kurt Vileは、この解放された時間を通して、
居心地の良さの自由を獲得している。
いつまでも続いてほしい快感を、何の気兼ねなく、続けたいだけ続ける。
長さに意図があるわけではない。
自由でいたら、これくらいになっちゃったんです的な、
ゆるーい長さ。

「こんなに長い必要があるのか?」
という問いに対して、
「『必要』って何?」
と聞き返してくる。

展開がない?
メッセージを伝えるにはもっと短くていい?
間延びした感じを与える?
飽きる?

「必要」を後押しするいくつかの「理由」が挙げられるが、
改めて問われてみると、
どれもほとんど説得力がない。
というより、ここで鳴る音楽にはまったく無関係であることに気づく。
そして、そんな批評をしている自分にふと気づき、
ちょっと悲しくなる。

Wakin On A Pretty Dazeを聞くうえで、
時間は時間としてとらえる必要はない。
ただ浸っていたい、と思わせる音楽が、
浸っていたいだけ流れていく。
これほど幸せなことはないではないか。

行事で予定を埋め、
その「占領率」の高さから
「今日は充実した一日だった」
と満足することや、
引退する日までの目標値を手帳に書き込んで、
しゃにむにそれに向かって走り続けることも、
そろそろ飽きてきたのではないか。

というよりそんなことしなくても、
いやというほど、僕たちは追われているのだから。

一日中ソファの上でだらだらと聞き続けるKurt Vile。
Goldtone(黄金の音色)の至福は、
無限ループのまどろみの中にしか
見つけることはできないのだよ。
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Wye Oak - Civilian [Artist V-Z]

いま住んでいるアパートは仮住まいで、
木のタイルを敷き詰めた大きなリビングに無造作にラグがひかれ、
壁際に大きなソファが鎮座している。
借りものの家具というのはあまり気持ちいいものではなく、
ほとんど座っていない。

アメリカの電球はすぐ切れる。
最初はまめに替えていたけれども、いまは面倒くさくなって
フロアランプも、だから点かないままに窓際に突っ立っているだけだ。

エレベーターもとても旧式で、各フロアにある、いまどこの階にエレベーターがいるかを示す表示が、
くるくる回る機械式のメーターになっているのだが、これが壊れていて、
9→10→9→10→9
とただ行ったり来たりするだけで、何の役にも立たない。

60年代のアメリカンシネマに出てくるような陰気なカーペットを敷き詰めた廊下で、
壁にかかったさびた銀の枠のミラーに映る自分の姿を見ながら、
しかたなくエレベーターを待つことになる。

駐車場からアパートに入る裏口はカギがかかっていて、
入るのに呼び鈴を押して、守衛に開けてもらわないといけないのだが、
その開錠のブザーの音がけたたましくて、いちいちびくびくしてしまう。

向かいの住人さんにはまだお目にかかっていないのだが、
扉にPhDの標識が出ていて、毎日大音量でオペラが流れてくる。
ただ気を使っているようで、夜7時以降は聞こえてこない。

こんな日常だが、決していやなわけではない。
むしろ居心地がいい。
別に気取ってチェルシーホテル気分を味わおうとしているわけではない。
慣れたからとか、あきらめたから、というわけでもない。

この「なんとなくさえない日常」というのは、とても当たり前化していて、
それに対していちいち反応しなくてもいいくらいに、精神的、神経的な耐性が
できてきている気がする。
むしろそれを観察してその中の機微を見出して楽しむぐらいの余裕がある。

Wye Oakはまさにそんな機微を見出しているユニットだといえる。
そのけだるさやマイナー調や、いかにもインディー然としたところから、
決して目立つわけではないのだが、そこから漂うわずかな詩的情緒が、
いったん入り込むともう抜けないくらいの強い訴求力を発揮する。
もう2年ほど前のアルバムなのだが、以来、心に巣くってしまって離れない。
いうまでもなく、いまのアパートにぴたりとなじむ。
廊下に漏らすにはオペラもなかなかだが、Civilianも負けず劣らず似合う。

気分的にハイな時に向くわけではないかもしれないが、
だからといってローな時だけに聞くものでもない。
あえて言えば「ナチュラルロー」
いまの時代は(実はいつの時代もそうかもしれないが)
みんなが普通にナチュラルローなのだ。

9→10→9→10→9→10→9→10・・・
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Yazoo - Upstairs At Eric's [Artist V-Z]

韓国のデザインセミナーの集まりで知り合った館長が運営するModern Design Museumを訪れた。今年3月にオープンしたばかりの新しい博物館は、韓国のここ100年のデザインを歴史を展示している。すべて館長が長年集めてきたもので、建物も自費で建てたものだという。韓国初めての新聞や、日本統治下のポスターから、60~70年頃のテレビや冷蔵庫などがコンパクトにまとめられ、似ているようで違うお隣の国の文化事情が垣間見れて面白い。

年代的に懐かしさを刺激させる70年ごろのものが特に印象的で、久々にソノシートプレーヤーをみたときは狂喜してしまった。取っ手のついたオレンジのふたの携帯型プレーヤーは、今持ち歩いてもさまになる。そう、ちょうどYazooがもっている味わいに似ている。

ピコピコのエレクトロポップは80年代当時もどこかレトロなところがあって、錆びた風情を持っていた。Alison Moyettのはっきりした歌いっぷりが対照的で、ドールハウスの中で目覚めてしまった命を持った人形の歌舞台は、シュールでダダでキッチュだった。

そう、むかしはペラペラのプラスチックフィルムに溝を刻んで音を録音していたのだ。フェティッシュではかないそのイメージは、現代の消費文化から失われてしまった気がする。デジタルな世界での創出と消去は実にあっけない。クリックひとつでmp3ファイルが生まれ、Delete一発でこの世から消えてしまう。

消費されるはかないポップに花を添えてキスをする。Yazoo的な音楽の楽しみ方を取り戻してみたいと思ったりする。
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Lil Wayne - Tha Carter III [Artist V-Z]

幅広い聴取者に届くアフロアメリカン・カルチャー・サウンド。ヒップホップ、ラップ、ソウル。癖があり、主張が激しく、テンションの高いこれらのスタイルは、時代を進める革新性を持つ一方で、聞き手を選び、排他的な方向に進みがちなところがある。ポップ寄りの趣向を凝らすと安易な迎合と受取られるところも、難しいところ。Lil Wayneはアグレッシブなテイストを残しながら、聞き手を分け隔てる壁を超えるすべを心得ている。もともとアフロアフリカン・サウンドの持つ、カラダの芯を溶かすような熱い情感のもとを、たくみに音波に乗せて、聞き手の琴線に届ける。ダイレクトに効く表層としての音の鮮度のほかに、静かに無意識にこころに温かみが伝わってくる。革新と融和。そんな音楽の可能性を夢想させるサウンド。

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The Wedding Present - El Ray [Artist V-Z]

寡黙なミドルマン。
会社でさえない仕事をしながら、
飲みにも行かず、
家庭の会話にも参加できず、
何かを待ちながら、
何を待っているかわからない。
そろそろ限界かなと思いつつ、
じっと耐えて、ホームで電車を待つ。

ヘッドフォンから流れてくる
The Wedding Present
ヒーローを見つけたと思ったら
なんだ、ハリウッドのスパイダーマンだった。
暴れることもないし、
皮肉りながらも、
オルタナティブを標榜しながらも、
静かにハモリながら、
適度にひずみながら、
ギシギシ音を立てながら、
じっとたたずむ。

何もできない。
何もしないことの苦悩と、
やりきれなさの、
あまりに痛々しいリアリティ。

こういうところにとどまるバンドは、
なかなかいない。

叫ばないロックバンドは、
きょうもミドルマンのそばにたたずんで、
一緒にため息をついている。
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Martha Wainwright - I Know You're Married But I Got Feelings Too [Artist V-Z]

力強い声は、時代やジャンルの壁を越えて鳴り響く。
Martha Wainwrightは60年代フォーク・サイケデリックも、90年代オルタナティブも眼下に見下ろしながら、先へ先へと突き進むように歌う。

その声は悲しみや悩みをかなぐり捨て、ただ響きだけを印象の中に落としていく。ロックが何かを表現する必要などあったのかと思わず振り返るほど、あっけらかんとしている。

See Emily Playのしがらみが抜け切った軽石のような感覚は、それでも硬く私たちの意識にぶつかってきて振り返らせる。

乾いたパンチ。
渇いた感性。

この無情感がここちよい。
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Frank Zappa - Sheik Yerbouti [Artist V-Z]

スタイリッシュなファストフードチェーンを立ち上げた実業家を訪ねた。そのほかにもうひとつアパレル系の事業をやっていて、どれも面白くて、成功している。青いダウンのベストと、大きなブーツが印象的で、桜が満開の西東京のオフィスの周りを昼食のレストランまで散歩しながら、刺激的な話をたくさんした。

キューブ状の食材をたくさん作って、好きなようにまぜて料理を作るとか、彼氏が選ぶカラードリンクで性格占いをしてしまうとか、老人ホームの入居者に生きる喜びを与えるファストフードを作るとか。

お互いぽんぽんアイデアが出てきて、
(企業秘密のために詳細は書けません(笑))
昼食に出た春野菜のグリルの味をろくに覚えていない。

思ったことをそのままやる。
最初はそんなのばかげていると言われようが、やってしまう。
常識は自分の後からついてくる。

コンサルと称して人に話しかけてばかりいる自分がなんだか空しい。
やっぱりやったもんが勝ちだし、やることが大事。

こつこつと2ヶ月かけて磨き上げてきたデザインを見せてくれたデザイナーがいたけれども、その誇らしげな顔と同じぐらい誇らしくそのデザインが光っていた。

Frank Zappaも、なんだかんだいって、やったもん勝ちの人です。批判するのは簡単だし、面白がるのも簡単だけど、そんなまわりのすべての人を「何だかバカバカしい」と空しさの穴に落としこめてしまう、筋金入りのやったものが勝つのだを体現した人です。

批評や概念化を、真っ向から批評と概念化で返す皮肉で強靭で完璧な構造は、永遠にZappaを対象化させない。常に対立概念が必要で、相対性の中でなにが何だかわからなくなってくる。執拗に繰り出される「量」によってさらに時間稼ぎをする。本当に「おおざっぱ」としかいえないところまで持っていってしまう。

「言葉にならないおいしさだ」
なんていう物書きはインチキだ。
言葉にするのがあなたの仕事でしょ!
自己矛盾じゃん、ってけらけらと笑いながらいう実業家は、
もう完全Frank Zappaの様相。
妙な明るさと軽さはSheik Yerboutiあたり。

パチパチとこっちのデジカメ写真を撮るのは、何でも自分のブログに載せるためだそう。すごー。書いてほしいな。読んでみたいな。

まさかこっちもブログにしてるなんて思わないだろうな。
そんなこと一言も言ってないし。
こっちは写真も取らないし、誰かも特定させないよ。

皮肉屋ではZappaにも、実業家にも負けないのだ!
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